センバツ高校野球 春便り 石橋、作新学院 /栃木
県勢2校がセンバツの舞台へ――。27日に開かれた第95回記念選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)の選考委員会で、作新学院(宇都宮市)と石橋(下野市)の出場が決まった。作新学院は6年ぶり11回目、21世紀枠で選出された石橋は春夏通じて初の甲子園となる。県勢としては5年ぶりの「春」出場となり、2校の出場は2014年の第86回大会の白鷗大足利と佐野日大以来、9年ぶり4度目。両校の選手たちは出場決定の知らせに喜びを爆発させた。大会は3月18日に阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で開幕する。【鴨田玲奈、玉井滉大、面川美栄、渡辺佳奈子、御園生枝里】 ◆石橋 21世紀枠 春夏、初の甲子園 午後3時半、大会公式サイト「センバツLIVE!」で21世紀枠の出場校として「石橋」の名前が読み上げられると、校長室で配信を見守った瀬端徹校長と福田博之監督らはがっちりと握手を交わした。石橋は過去2度、関東・東京地区の候補校に選ばれながら落選。その悔しさを知る福田監督の目には涙が浮かんでいた。 別室で待機していた選手らは正面玄関に整列。瀬端校長から「石橋高校が選出されました。おめでとう! 甲子園で持てる力を存分に発揮できるよう精進していきましょう」と伝えられると、ガッツポーズをしたり仲間と抱き合ったりして喜びを表現。横松誠也主将(2年)は「信じられない。うれしいの一言」と目を丸くした。 ユニホームに着替えて中庭に集まると、在校生からも祝福の声が上がった。歓喜に沸く選手らを、福田監督は「仙台育英の須江(航)監督じゃないが、高校生は『密』なんですよね。野球に勉強に一生懸命やってくれている生徒を選んでいただけてうれしい」と笑顔で見守っていた。 選出の決め手となったのは、昨秋の県大会4強などの安定した戦績に加え、地元の小学生を対象に、野球教室と合わせてNPO法人と連携して実施する肩肘検診などの取り組みだ。横松主将も小学生の頃に参加経験があり、「(肩肘を)診てもらうことで、小さい頃から風呂上がりにストレッチをするなどケガ防止への意識を持つようになった」と語る。そうした関わりが、石橋への進学を決める理由にもなったという。 前日は緊張で眠れなかったという横松主将は「小さい頃からテレビで見ていて憧れの場所。甲子園に行くことが高校野球をやる大きな理由の一つだったので、ありがたみを感じながらプレーしたい」。福田監督は「素晴らしい学校がそろう中で選んでいただけたということを肝に銘じ、選ばれなかった学校の分も一生懸命やらないといけない」と気を引き締めていた。 ◆作新学院 6年ぶり11回目出場 作新学院の選手らは同校グラウンドで大会公式サイトを見守った。午後3時40分ごろ、「作新学院」と呼ばれると、選手たちは「よしっ」とガッツポーズした。 その後の出場決定報告会で、部員61人を前に、高橋光男・総合進学部部長は「一日一日を大切に、さらなる高みを目指してほしい」と激励。選手たちは、新型コロナウイルス感染防止のため、マスクをつけて「てっぺん取るぞ!」と意気込んだり、声を出さずにジャンプしたりして全身で喜びを表現。チアリーディング部や吹奏楽部もダンスや演奏で、選手たちを応援した。 小針崇宏監督は「秋の関東大会で敗れ、選手たちが流した涙を見て、本当に勝ちたかったんだなと感じた。選ばれる可能性が1%でもあれば頑張ろうという思いで、約3カ月間練習してきた。選んでいただき、うれしい気持ちでいっぱい」と話した上で、「全国で戦うためには、打力の精度、打線の厚みが必要。守備では主戦の川又楓に続く投手陣の整備もポイントになる」と課題も口にした。 県大会、関東大会の全6試合で、打率5割8分を誇る高森風我(2年)は、「冬の練習で、右の軸足に負荷をかけて強くなったが、もっとどんな球種でも芯で捉えられるようになりたい」。川又(同)は「1番を背負う以上は、作新の投手と言えば川又だと言われるようになりたい。140キロを投げられるように練習していく」と気を引き締めた。 草野晃伸主将(同)は、昨夏の県大会準決勝で敗れた3年生の思いを背負って練習してきたといい、「作新の校歌を甲子園球場で歌うという目標をしっかり達成したい」と力を込めた。 ◇両校や駅前で号外配布 作新学院、石橋のセンバツ出場決定を伝える毎日新聞の特別号外が27日、両校やJR宇都宮駅、石橋駅前などで配られた。 号外はカラー刷り2ページ。宇都宮駅前で手にした作新学院高1年、入江茉羽さんは「センバツ出場で、さらに応援したい気持ちになった。優勝を目指して頑張ってほしい」とエールを送った。石橋では7限終了後、校内放送で全校生徒にセンバツ出場が知らされた。投手の藤巻翔汰とクラスメートの2年、赤星佑哉さんは「今日は一日中わくわくしていた。甲子園に行きたいと聞いていたのですごくうれしい。日々の努力が実ったと思う」。マネジャーの2年、野沢優衣さんは「夢みたい。ケガをしないように、全力でサポートします」と意気込んだ。 ◇学校プロフィル・石橋 共学の進学校、1935年創部 1924年、県内8番目の旧制中学「石橋中学校」として開校し、48年から現校名。生徒数は710人。共学の進学校で、昨年度は135人が現役で国公立大学に合格した。 野球部は35年創部。部員は2年生19人、1年生18人の計37人(マネジャー5人を含む)。同校は第89回、93回大会の「21世紀枠」関東・東京地区候補校に選出されたが、甲子園の出場経験は春夏ともにない。 他の部活動も盛んで、放送部や陸上部は全国大会に、吹奏楽部は東関東大会に出場した実績がある。歴史研究部は22年、全国大会で優秀賞を受賞した。 学校OBは作家の室井佑月氏ら。 下野市石橋845(0285・53・2517)。 ◇学校プロフィル・作新学院 62年、甲子園春夏連覇 1885年に「下野英学校」として創立。作新館、下野中学校などと改称を重ね、現在の校名となった私立の男女共学校。トップ英進・英進部、総合進学部、情報科学部があり、生徒数は3753人。2011年には、文部科学省の「スーパーサイエンスハイスクール」に指定された。陸上部や水泳部、ボクシング部など全国大会で活躍する部活動は多数。 野球部は1902年創部で、部員は61人。甲子園は過去26回出場(春10回、夏16回)。62年には史上初の甲子園春夏連覇を達成し、2016年夏も優勝した。プロ野球のOBは八木沢荘六氏(元ロッテ監督)、江川卓氏(元巨人投手)ら。 宇都宮市一の沢1の1の41(電話028・648・1811)。 ……………………………………………………………………………………………………… ◇県勢のセンバツ出場校 大会 年 出場校 成績 11回(1934) 栃木中 2回戦 16回(1939) 栃木商 1回戦 23回(1951) 宇都宮工 準々決勝 30回(1958) 宇都宮工 2回戦 33回(1961) 作新学院 2回戦 34回(1962) 作新学院 優勝 35回(1963) 宇都宮商 1回戦 43回(1971) 作新学院 2回戦 45回(1973) 作新学院 準決勝 47回(1975) 小山 1回戦 48回(1976) 小山 準優勝 49回(1977) 作新学院 1回戦 51回(1979) 作新学院 1回戦 宇都宮商 2回戦 58回(1986) 宇都宮南 準優勝 59回(1987) 国学院栃木 2回戦 60回(1988) 宇都宮学園 準決勝 61回(1989) 宇都宮工 1回戦 63回(1991) 宇都宮学園 2回戦 65回(1993) 佐野日大 3回戦 66回(1994) 佐野日大 1回戦 68回(1996) 宇都宮工 準々決勝 69回(1997) 国学院栃木 2回戦 72回(2000) 国学院栃木 準決勝 作新学院 準々決勝 74回(2002) 宇都宮工 1回戦 76回(2004) 作新学院 1回戦 78回(2006) 真岡工 1回戦 79回(2007) 佐野日大 2回戦 80回(2008) 宇都宮南 2回戦 84回(2012) 作新学院 2回戦 85回(2013) 宇都宮商 2回戦 86回(2014) 白鷗大足利 2回戦 佐野日大 準決勝 89回(2017) 作新学院 2回戦 90回(2018) 国学院栃木 3回戦 95回(2023) 作新学院 ? 石橋 ? ※栃木中は現栃木、宇都宮学園は現文星芸大付