『エイリアン:ロムルス』シンプルで骨太な原点回帰、監督フェデ・アルバレスの演出力
「寄せ集め」の若者たち
『エイリアン』シリーズの大きな特徴といえば、密室空間で展開するエイリアンとの対決であり、第1作から『エイリアン4』(1997)まで、約20年間にわたって主役を張ったリプリー役のシガニー・ウィーバーだろう。ところが本作は、前者の「密室劇」というテイストや、人間とアンドロイドが共存する設定を継承しつつ、新たな方向に物語の舵を切った。 ポイントは、レインとアンディの“姉弟”をはじめ、今回の登場人物たちがみな寄せ集めの若者であることだ。強靭な肉体や特別なスキルをもった軍人もいなければ、宇宙船の専門知識を有するクルーもいない。彼らはあくまでも、植民地からの脱出、つまりは現在の生活を脱却することだけをモチベーションとするチームなのだ。 ごく普通の若者たちが、エイリアンという未知の脅威に対峙する。『ドント・ブリーズ』のフェデ・アルバレスにとって、この筋立てはいわば得意分野だろう。なにしろ『ドント・ブリーズ』は、強盗を目論んだ若者3人が民家に侵入し、盲目の元軍人に追跡されるというスリラー映画だったのだ。「民家」を「宇宙ステーション」に、「盲目の元軍人」を「エイリアン」に置き換えれば、物語の構造がそっくりであることがわかる。 アルバレスとともに共同脚本を手がけたのは、『ドント・ブリーズ』も執筆したロド・サヤゲス。特筆すべきは、『エイリアン』のキモである密室でのアクション・ホラーを三幕構成の第二幕まで取っておき、第一幕は人間関係をじっくりと掘り下げる、SFスリラーとしてはややスロースタートの青春劇としたことだ。 時間をかけて若者たちの微妙な関係を描きながら、人間とアンドロイドの間にある差別や暴力などを見せることで、設定が現実世界のメタファーとなっていることを示唆する豊かさ。それらがすべて中盤以降の布石になっていることを含め、たいへん細やかに練り上げられた脚本である。特に前半部を、シリーズ第1作『エイリアン』を思わせるアンサンブル・プレイに仕上げているあたりも心憎い。