イスラエルに武器供与継続の米政権、ガザの現実とかけ離れた判断
(CNN) イスラエルに対して期限付きでパレスチナ自治区ガザ地区の人道状況改善を求めていた米政権が、イスラエルは人道支援を妨害しておらず、従って対外軍事支援に関する米国の法律には違反していないと判断した。 【映像】ガザの市場に空爆 米国務省は、変化は必要だが進展はあったと強調。イスラエルに対する武器供与は継続する。 だが米政権のこの見解は、ガザに届く援助物資がほとんど行き渡らない現実とはかけ離れている。 イスラエル軍の激しい軍事作戦が続くガザ北部から避難した住民は、慢性的な食料不足で人々が餓死していると証言した。支援団体は、ガザ北部が飢餓の瀬戸際に追い込まれていると危機感を募らせる。 CNNの取材に応じたウンム・ムハンマド・アルアトウトさん(63)は「支援は何もない。誰も私たちに食料を届けてくれない」「子どもたちが飢えと渇きで死んでいる」と語った。 ガザ北部ではイスラエル軍が10月初旬に地上作戦を再開。同地ではほかの住民も、餓死者が出ていると証言した。 80代の両親と一緒に何キロも歩いているというアブ・アハメド・スバイさんは、「食べ物が何もない」と嘆く。 ガリアさんという83歳の女性は「もう野菜も肉も果物も知らない。以前は缶詰で生きていたけれど、今は缶詰もなくなった」と訴えた。 世界保健機関(WHO)は8日、「ガザ地区北部は飢餓の瀬戸際にある可能性が極めて大きい」と警告した。 ガザ北部にあるカマルアドワン病院長のハッサム・アブ・サフィヤ医師は13日、栄養失調の子どもや大人数十人を受け入れたと語った。 ガザの人道状況は2023年10月に戦争が始まって以来、最悪の状態に陥ったと支援団体は指摘する。 イスラエルの軍事作戦が続く中、数十万人が避難命令の対象となり、法も秩序も崩れて支援物資が略奪され、トラック運転手は不足し、支援物資の搬入はイスラエル当局によって頻繁に阻止される。 バイデン米政権は先月、イスラエルに対して30日以内にガザの人道上区改善に向けた措置を講じるよう求め、期限を迎えた12日、米国務省は「イスラエルが米国の法律に違反したとは判断しない」と発表した。 これに対して人道支援団体8団体は連名で、イスラエル政府は米国の基準を満たしていないどころか、ガザの状況を劇的に悪化させる行動を取っていると訴えた。 世界食糧計画(WFP)によると、ガザに入るトラックの台数は10月後半の時点で1日平均58台に減り、昨年11月以来で最低となった。 今回の戦争が始まる前は、1日500台前後のトラックがガザに入っていた。 ガザ支援物資を管理するイスラエル機関の占領地政府活動調整官組織(COGAT)は9日、10月初旬以来、支援トラック713台がエレズ西検問所を通過してガザ北部に到着したと説明した。しかしその大半は検問所にとどまっている。 ケレムシャローム検問所も似たような状況にある。COGATが13日に語ったところによると、同検問所のガザ側ではトラック900台分の支援物資が待機している。しかし12日に引き取られたのは122台分のみだった。 WFPは12日、緊急に支援を必要としているガザ北部の地区への配送を予定していたが、イスラエル当局が認めなかったと語った。 国連のジョイス・ムスヤ人道問題担当事務次長補は12日の国連安全保障理事会で、ガザ北部への人道支援をイスラエルが妨害していると断言。「戦闘が続く中、ガザ北部では約7万5000人の水と食料の供給が減り続けている」と指摘した。