調達業務が高度化する中、日本企業はなぜ専門人材の供給・育成に注力しないのか?
その検討段階から調達部門が積極的に関与し、調達先候補や調達コスト分析などの情報を提供し、外製か内製かの判断に貢献している。しかも、単純なコスト比較にとどまらず、採用する部材や仕様、他社と比べて設計、生産、技術に差別性があるか、限界利益を睨みながらどの品質レベルまで妥協するのかなど、より複雑な観点を理解したうえで、議論に参加している。 開発購買においても、製品を構成する機能を分析評価してコストを最小化するバリューエンジニアリングや、必要部品や技術を持つ国内外の新規サプライヤーの開拓などで調達担当者が活躍している。製品開発の段階から調達部門が関与すれば、下流工程での価格交渉を中心としたサプライヤーマネジメントだけでは達成できないレベルの成果が実現可能になる。 ただし、そのためには、開発・設計部門と効果的に協働するための技術的知見や、さまざまなソースからサプライヤー情報を収集・蓄積していることが求められる。こうした知見の習得は調達業務を経験するだけでは難しい。 つまり、間接部門中心のジョブローテーションでは問題があるということだ。調達機能を重視している企業では、例えばR&D部門と調達部門を行き来させる人事異動を通じて、調達担当者がR&Dの最先端情報に触れられるようにしている。 ● 新たに加わったサステナビリティ対応業務に翻弄される サステナビリティ対応に関する社会的要請が高まる中で、調達活動においてもサステナビリティ要件を満たしていることが、取引の開始や継続の条件になりつつある。 特に外資系企業はサステナビリティ対応を重視しているため、重要サプライヤーに対してはサステナビリティ観点で評価や監査を行い、問題があるサプライヤーには是正措置を求めている。昨今はそのような評価・是正の対象を、主要サプライヤーに限らず拡大する傾向が見られる。 従来のサプライヤー評価手法にも、ESGに関連する項目は含まれていた。例えば、新しいサプライヤーとの取引では信用調査を行い、サプライヤーが不正取引や法令違反など不適切な行動をしていないことを確認していた。