「企業経営の手法」で国家運営、マスク氏主導の“大リストラ”も…投資家・実業家ぞろいの「トランプ政権」が失敗できないポイントとは
企業経営の手法で国家運営
米国のドナルド・トランプ次期大統領は11月22日、投資家のスコット・ベッセント氏を財務長官に指名した。ベッセント氏は金融業界の中で最もトランプ氏を支持していた人物の1人だ。これにより次期政権の布陣がほぼ固まった。 【写真】「ディール」のプロが結集…トランプ政権「異色の顔ぶれ」をチェック
米国内ではトランプ氏への期待が高いようだ。米国の世論調査機関・ピュー研究所(ピュー・リサーチ・センター)が22日に発表した世論調査の結果によれば、53%がトランプ氏の将来への計画や政策を支持している。最も評価しているのは経済政策で、59%が「非常に信頼」「ある程度信頼」すると回答した。 トランプ氏の経済政策は世界でも注目されているが、同氏はどのような国家運営を目指しているのだろうか。 次期政権のキーパーソンは米国を代表する企業家であるイーロン・マスク氏だ。今や「時の人」となっている。米ハーバード大学などが13~14日に実施した調査で、大統領選の投票行動に最も影響を与えたのがマスク氏だったことが明らかになった。 マスク氏の重用からわかるように、トランプ氏が米国の国家運営に企業経営の手法を持ち込もうとしていることは間違いない。
目指すは1900年頃の米国
企業経営の原則は「収入を増やして支出を減らす」ことだ。 トランプ政権の場合、収入増の最も大きな柱は高率の輸入関税だろう。トランプ氏は25日、メキシコとカナダに対してはすべての輸入品に25%の、中国に対しては追加で10%の関税を予告した。実施すれば関税収入が大幅に増加する。貿易収支赤字が削減されることも確実だ。 収入を確保するもう一つの手段は、バイデン政権が石油・ガス業界に課していた規制の撤廃だ。米国の原油・天然ガスの生産量は既に世界第1位となっている。これらのさらなる増産で輸出を拡大させる算段だ。 競争力のある産業を育成することも重要な柱だ。 19日、通商・産業政策を担う商務長官に実業家のハワード・ラトニック氏が指名された。そのラトニック氏が指摘するように、トランプ政権が目指しているのは1900年頃の米国だ。 1901年に鉄鋼大手USスチールが誕生するなど、当時の米国は重化学工業をテコに飛躍的発展を遂げていた。トランプ政権が革新的な製品・サービスを生み出すことができる環境を整備し、米国の産業競争力強化を図ることは間違いないだろう。