「企業経営の手法」で国家運営、マスク氏主導の“大リストラ”も…投資家・実業家ぞろいの「トランプ政権」が失敗できないポイントとは
債務拡大の抑制に失敗すれば大惨事
米議会予算局(CBO)は8日、今年度の米連邦政府の赤字は1兆8340億ドル(約275兆円)に達するという推計値を公表した。歳出が急増したコロナ禍以降で最大となる見通しだ。トランプ氏の公約が実現すれば、今後10年間で7.5兆ドル(約1100兆円)の財政赤字の要因になると見込まれており、米国債の大量発行により長期金利が急上昇するリスクは高まるばかりだ。 長期金利の上昇が株価に悪影響を与えるのは言うまでもない。米国の時価総額を名目国内総生産(GDP)で割った値(バフェット指数)は9月末時点で過去最高の約2倍となり、割高感が高まっているとの懸念が生じている。 筆者が最も懸念するのは商業用不動産へのダメージだ。 ブルームバーグによれば、商業用不動産の所有者は来年末までに1兆5000億ドル(約225兆円)相当の債務の返済期限を迎えるが、その4分の1は借り換え困難だ。長期金利が上昇すれば、借り換えが困難となる案件がさらに増加する。金融機関は商業用不動産融資を絞り始め、ニューヨーク連銀は10月23日、商業用不動産融資が金融システム全体へのリスクを増大させていると警告を発した。 次期政権が債務拡大の抑制に失敗すれば、米国経済はバブル崩壊に見舞われてしまうのではないだろうか。
藤和彦 経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。 デイリー新潮編集部
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