JR九州高速船の浸水隠し、「国に知らせれば運航停止の指示必至」と聞いて…社長が報告しないことを容認
JR九州の子会社「JR九州高速船」(福岡市)の旅客船「クイーンビートル」(定員502人)が浸水を隠しながら3か月以上運航した問題で、同社は31日、国土交通省に改善報告書を提出した。報告書では、隠蔽を判断した当時の同社社長は、安全統括管理者らから浸水を国に知らせれば運航停止の指示が必至と聞き、報告しないことを認めたなどと原因を分析。改善措置としては、JR九州によるガバナンス(企業統治)の強化など五つの柱を明記した。 【表】JR九州高速船とJR九州がまとめた再発防止の具体的施策(主なもの)
JR九州高速船は昨年も、浸水発生時に船の検査を受けずに航行を続けたとして行政処分を受け、昨年7月に改善報告書を提出していた。このため、今回は、「(昨年の報告書に記した)安全最優先の判断を行う『抜本的な意識改革』が、社長以下の各管理者自らに行われなかったことに大きな原因がある」とした。
報告書によると、クイーンビートルの船長は今年2月12日に浸水を確認。報告を受けた運航管理者は「浸水量が少ないことなどから経過観察とし、関係機関へ報告不要」と考えた。安全統括管理者も「安全運航に支障はない」と判断。両者は船員経験が長く、田中渉社長(当時)は翌日、運航管理者代行も含めた計4人で打ち合わせて、国土交通省九州運輸局に浸水を報告しないことを決めた。
この船は1月にも浸水が発生し運休しており、報告書では、社長は、予約客のキャンセル対応で再び営業社員に相当な負担が生じるのを避けたかったとの思いもあった、とした。5月30日まで運航し、その後に船首部に10か所の亀裂が見つかった。隠蔽は8月の同省の抜き打ち監査で発覚した。
報告書提出に合わせ、同社は31日付で安全統括管理者と運航管理者を解任。新たに松尾英典・副社長を安全統括管理者に、同社OBの原田浩一氏を運航管理者に選任したことを国交省に届け出た。国交省は9月、同社に対して行政処分の安全確保命令と、全国初となる「安全統括管理者・運航管理者の解任命令」を発出しており、対応はいずれも10月末が期限だった。