「デモに行け」と言われても…日本に住む私たちが出来ること 子育て中の記者が研究者の言葉から得た民主主義のヒント 給食なしvsおかわり自由 どっちが良い?
ー取材を終えてー「デモに行け」と言われても・・・
「投票に行かなければ、文句も言えないじゃないか」。直近の国政選挙(2021 年)で、日本の20代の投票率が36.5%であることを伝えたとき、7時間差あるオンライン画面の先で、スタファン・リンドバーグ教授はあきれたような、少しいらだっているような表情を見せた。「なぜ日本の若者が政治と距離を置いているのか、私には理解できない」と首をかしげた。 民主主義の大切さについては理解できたが、世界におけるデモや革命の話をされても、それをそのまま読者に伝えて共感を得られるか、正直ピンと来なかったのがホンネだ。どうすれば、日本の若い人たちに民主主義や選挙の大切さを知ってもらえるだろうか。いや、そもそもなぜ、政治に興味がない人が若年層には多いのだろうか。 ヒントを求めて、粕谷祐子・慶応大学法学部教授(V-Dem東アジア地域センター所長)を訪ねた。 粕谷氏は、フィリピンやマレーシアの選挙の様子を目にした経験をもとに「家庭単位」での教育が大事ではないかと指摘する。「東南アジアの国々の人は、選挙に家族で行くんです。親や、おじいちゃんおばあちゃんと一緒に選挙に行くようになると、小さいうちから『選挙とは、行くものだ』という習慣のようなものができていく」と話す。 教育、というよりは「家庭単位でそういう習慣があると、政治に関する環境に無意識に近づいていく」。また、国政レベルでは、政権交代が起こりそうにないなど、最初から誰が国のリーダーになるのかが分かってしまう選挙だったら「『行ってもしょうがないよね』と世代を問わず諦めに近いものがあるかもしれない」とも分析。政権を任せたいと思える新たな勢力が日本では育っていないことが、投票率の低さにつながっていることを暗示した。 民主主義は身近なところにもある、と粕谷教授は話す。「例えば、生徒会。学校だから、生徒は全員、投票権を持っていますよね。でもそれを使わなかったら、自分が好きではない人が生徒会長になって、めちゃくちゃな校則を作ってしまうとか。そう考えると、投票に行った方がメリットがあると伝えやすいですよね」。生徒会選挙でなくても、例えばクラスのなかで新しいルールを決めることも「クラスの自治をどうするか、という話ですし、リーダーシップを発揮する子どもにどうしたら育てられるのか話し合うことも、民主政治です」と説明した。 「政治の仕組みを理解するのは政治学者の仕事ですが、投票権がない子どもたちにも、普段の生活から自分事として考えられるところに民主主義があるよ、と話したり、自分の生きている空間、学校の仲間や一緒に過ごしている友達の間でどんなふうに合意の形成をしていくのかっていうことについて考えたりするという過程を大事にしてほしい。そこが、民主主義の一番の基礎だと思います」。 出来ることが、私たちにもあるかもしれない。選挙に行っても変わらない、いや、そもそも政治に興味を持ってはもらえないだろうと諦めるのはまだ早いと考えさせられた。 まもなく、選挙だ。子どもを連れて投票に行ってみようと思った。(今村優莉)
テレビ朝日