大分トリニータU18コーチ 馬場賢治氏ープロの予備軍に必要なものとはー
馬場さんがU18のころと、今のU18の選手と一番の違いは、どのようなものだと思われますか。 馬場「私は高校サッカー出身で、クラブユースの経験はないのですが、それでも私の時代と比べると、今はU18世代の試合数、特に公式戦の数が増えていることが、一番大きな違いだと思います。このことは、日本サッカー界全体として、高校世代およびU18世代の強化に力を入れていることの表れだと言えるでしょう。」 試合数が増えるとけがのリスクも高くなるのではないでしょうか。近年はスポーツ医学も急速に発展しているので、以前ほどでもないのかもしれませんが。 馬場「けがの可能性も高まりますが、例えば最近の夏は非常に気温が高くなり、今の選手たちはその中で試合やトレーニングをしているので、そうした体調管理もU18のコーチとして、考えておく必要があります。また、今はユース世代にもトレーナーがついていますし、医学自体も進歩しています。そのため、ケアという部分では、私のU18の頃よりも発達していると言えるでしょうね。」
「選手に必要なもの」を伝える
また、今の時代はスポーツ選手とメディアの付き合い方というのも、以前とは異なるかと思います。その点は、U18のコーチとしてどのように感じていますか。 馬場「メディアが原因となっているのかどうかは不明ですが、今の選手の間では、例えば上下関係などは以前とは違い、監督と選手の距離が非常に近いと感じることが多いです。でも、その一方で、選手間や監督との上下関係が厳しいところが今でも存在しているのも事実です。私自身はそれが良いことだとも悪いことだとも思っていないのですが、それでも、人として大事なことは忘れずに伝えていく必要があります。その意味では、U18のコーチとしては、自分たちの世代と違いがあるということを意識しながら、それでも大事なことをきちんと伝えながら、選手と接していく必要があると思っています。 また、今の若い選手はメディアを通じて、いろいろなトレーニング方法や練習方法、スキル等を研究しています。そうしたメディアの中には、スポーツ医学などのスポーツの専門家が情報を公開しているものもあれば、インフルエンサーによって公開されているものもあります。その情報が正しくかつ自分に必要なものかどうか、自分で感じることができるようになることが大事になってきます。 例えば、大分トリニータのU18では、トレーニングの最後の数十分を、各選手が自分に必要と考えた個々のトレーニングをする時間にあてています。そうした時間に、私から選手が行っているトレーニングやプレーの意図を質問することで、その選手に本当に必要なものを、選手に理解できる形で伝えることが、U18のコーチとして私がやるべき役割だとも考えています。」 馬場さんは大学のサッカー部でコーチをされた経験があると伺っております。U18 では年齢的に 大学生よりも若い選手を指導されることになります。大学生を指導するときと、U18 を指導するときでは、指導の仕方は変わってくるのでしょうか。 馬場「大学世代(19歳から22歳まで)と高校世代(16歳から18歳まで)の育成の最大の違いは、自主性の強さだと思います。大学世代の方が、高校世代よりも、より自主性が強くなります。 また、フィジカルの面でも、大学世代とU18世代では大きな差があります。20代前半でフィジカル面でも成長し、体が大きくなる選手が多いので、大学世代の方が体格が良い選手が多いです。そうなると、体の当たりも強くなりますし、プレー自体も大学世代の方がハードになります。 とはいえ、もし可能であるなら、大学世代になるまで待たずに、もっと若いうちにフィジカルを成長させた方が良いと、私は考えています。というのも、先ほどお話ししたように、U18の選手は、トップチームから明日にでも召集されるような立場にいます。そう考えると、U18の選手といえども、トップチームの選手と互角あるいはそれ以上にプレーできるフィジカルをすでに持っていた方が、選手としては有利です。 体の成長には個人差がありますし、その時期を外部からコントロールすることは難しいのかもしれません。でも、U18のコーチとして、選手のフィジカルが変わる時期ということは、意識しておきたいですね。」