認知症の人は「何もわからない」と決めつけたのは…20年前の医療機関で行われていたこと
認知症への誤解を解く
介護の現場で出会った人から「幸せになる方法」を教わった、と語る介護福祉士でイラストレーターの高橋恵子さん。今度はあなたに、イラストと言葉でメッセージを届けます。 【本編を読む】次のイラストは 「紙テープを無言で巻き続ける」そのもの悲しい理由は
今回は、私の脳裏から離れない、苦い記憶を取り上げました。 20年ほど前、私がまだ介護福祉士として働く前に、ある医療機関を見学にたずねました。 当時は、まだ認知症という呼び方ではなく「痴呆症」とか「呆(ぼ)け」と呼ばれていました。 その院内では「痴呆症になったら、本人はなにもわからなくなる」という見解が当たり前にありました。 今となってはひどい偏見に思えますが、当時においてはそれも、 世間一般と差異がなかったように思います。 言うまでもなく、認知症がある人を「なにもわからない、できない人」にしてしまったのは、 周りにいる私たちの無知にありました。 それから約20年間。 心ある医療・介護従事者の方々や、 そしてなによりも、認知症があるご本人・ご家族が、 その誤解をとくために必死に尽力されてきました。 そのおかげで現場は少しずつ、けれど私の足元でも実感できるほどに、明らかに変わりました。 「認知症になっても、本人そのものは変わらず、個々にあった人生を選んでいける」という事実が、広まっています。 ならば、これから次の20年は、 誰もが自分にあった人生を自由に選んでも、 実現できる社会になっているはずだと思わずにいられません。 《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》
高橋恵子