【”安く都合よく”はもう限界】エッセンシャルワーカーの報酬・処遇の悪いニッポン、「社会の支え手」を支える国への転換を
現場で働く人にできるだけお金を回さない仕組みの構築
現場で働く人々の条件の悪化がはじまったのはバブル崩壊後の1990年代~2000年代である。英米発の新自由主義が世界的に影響力を強め、平成不況が長期化する中、日本企業は生き残りをかけて、コスト削減、人件費削減に邁進した。 安定的な日本的雇用は狭められ、人を減らし、給与・賞与を抑え、残った人員で長時間残業を行う。その一方で、低賃金で有期の非正規を増やし、外部への安い委託を拡大した。人を安く都合よく使うことを良しとする、この日本の新しい「常識」は、30年かけて日本人の中に内面化されていった。 不況と自由化の中、現場で働く人にできるだけお金を回さない仕組みは、意識的・政策的に二つの形で構築されたと言える。 一つは、低処遇の非正規雇用の拡大である。正規・非正規という雇用の二元化・処遇格差を前提に、正社員は次々と非正規に置き換えられ、いまや働く全ての人の4割近くが、最低賃金レベルの低時給で、昇給も賞与もほとんどなく、有期雇用で先の見えない働き方に追い込まれている。経済的安定も誇りも傷つけうる働き方である。 これはもともと小売業や飲食業などで安く働く主婦パートや学生アルバイトからはじまった。今やスーパーマーケットや外食チェーンでは非正規が8~9割を占める店舗運営が当たり前になった。2000年代以降は規制緩和、公務員削減、官から民へという新自由主義改革のもと、公共サービス分野で大きく非正規が広がった。 ※こちらの記事の全文は電子書籍「あなたの日常が危ない 現場搾取社会を変えよう」で見ることができます。
田中洋子