【ラグビー】変わらぬ強み。小野晃征(東京サンゴリアス/アシスタントコーチ)
引退後はエージェント業でNZと日本の架け橋となっていた。 府中のグラウンドに戻ったのは今季からだ。「戻るべき所に戻ってきた」とは、田中監督の言葉だ。 171センチ、83キロの体躯で世界を相手に戦ってきた。その経験と豊富なラグビーナレッジで、選手たちを上昇に導く。 特に髙本幹也は同じSOで171センチ、82キロとサイズも酷似している。「的確なアドバイスをしてくれる」と小野コーチの印象を話す。 しかし、指導者としては駆け出した。本人は、自分が知っていることを伝えることが目的ではなく、選手たちが思い通りのプレーができるようになること、それがチームの勝利に結びつくことが大事と分かっているから「難しい」と言う。 土、日の試合に向けて週の半ば、試合の中で起こりうるシチュエーションを想定し、選手たちがその瞬間、瞬間に反応できるように落とし込む。 ピッチに立つ全員が、同じ絵を見て判断、動くチームが理想だ。 練習ではできるようになっても、それを実際の試合で実践できなければ意味がない。 「試合中、選手たちが自分たちでチームをドライブできるようにする。いろんな状況の中で判断し、(例えばSOなら、想定していた)状況と違うことが起きても(周囲を)リードしていけるようにするのが、コーチングのチャレンジ」と言う。 帝京大で大学日本一となった後、2023年1月途中からチームに加入した若い髙本について、「常に上手くなりたい気持ちを持っている」と評価する。 「個人練習もするし、いつもユタカ(流大/ながれ・ゆたか)とビデオを見て話しています。ラグビーが本当に好き。自分から学び、レベルアップしたい思いが伝わってきます」 ゲームプランを考え、実行する。仲間がセイムページを見られるように牽引し、それぞれの力を引き出す。 司令塔の役目は重いが、その素養を備えている。 日本代表としてともに戦い、サンゴリアスと縁の深いエディー・ジョーンズ氏(現・日本代表ヘッドコーチ)とは、いまも連絡をとる。 指導者として成長していくためのヒントをくれる人。本人にとっては、メンター的存在だ。 ゲームプランやテクニックの落とし込み方。発想のための着眼点。いろんな点について、多方向からの質問を投げかけられる。 具体的な選手名を挙げ、「どう伸ばす?」。そんな問いかけもある。 小野コーチ自身、成長していきたい思いは強い。 「サンゴリアスには、経験あるコーチが何人もいるので、いろんなことを学ばせてもらっています」 「コーチは長くできる」と話し、腰を落ち着けて生きていく。 いまはサンゴリアスに100パーセントコミット。経験を積んで将来レベルアップしていければ、と思う。 「目標は?」と問えば、「今週の試合(リコーブラックラムズ東京戦/3月2日)に勝つこと」と返ってきた。 「そうでないと、今週(試合に)出る選手のフォーカスからずれるので、先は考えません」 目の前の選手に情熱を注ぐ。 コーチとしていちばん大事なことは分かっている。