「受験直前期の家族に何が起こるのかをしっかり描いているので、シミュレーションとしてぜひ読んでほしい」【おおたとしまさ『中受離婚』インタビュー】
受験直前の不安や恐怖への耐性を上げるワクチン的な一冊
――最後に、この本をどんな方にどう読んでほしいという思いはありますか? 「タイトルとストーリーの背景にこそ“中学受験”がありますが、『中受離婚』は、じつは人生に関するノンフィクションです。本屋さんでもそいういう棚がピッタリなのではと思っています。最初にも言いましたが、中学受験そのものは関係なくても、“結婚ってなんだ”とか、“夫婦ってなんだ”とか、あるいは、“親子ってなんだ”とか考えている方には読んでほしいなと思います。単なる“中学受験”本と思われたくないという欲も、この表紙で仕上がったときに思いました。 もちろん、今まさに受験本番まで3か月を切っている小学6年生の保護者の方にもぜひ読んでおいてほしいです。夫婦関係の破綻は別として、中学受験の直前期の子どもと親子に何が起こるのかもリアルに描けていると思いますから。直前期のシミュレーションという意味では、昨年出した『勇者たちの中学受験』と同じような機能を持った本でもあるので、『勇者たちの~』や、人気マンガ『二月の勝者』のように、物語として中学受験を読むのが好みの方には、ぜひ読んでもらいたいですね」 ――じつは、まさに小6の受験を控えている子どもを持つスタッフがいるのですが、「いま『中受離婚』を読んでおいてよかった」と言っていました。 「本当ですか。それはうれしいです。直前期の親には、こういう物語を読むのが怖いっていう気持ちがあると思うんですよね。『二月の勝者』作者の高瀬志帆さんと僕との対談で、こんな内容のやりとりがありました。 『おおたさんの本にしても私の漫画にしても読むのが怖いっていう人がいる。だけど、その怖いって、いつかそのうち自分に降りかかること。だったら他人ごとで少しでもシミュレーションしておいたほうがいい』『その怖さと向き合ってページをめくるのが「二月の勝者」でいうところの正しい狂気を身につける第一歩なのかもしれませんね』と。 11月以降は、親自身も自分のメンタルが耐えられるのか不安な時期だと思います。だから、メンタルが試されるという意味で本を読むのが怖い気持ちもよくわかります。ですが、入試本番での感情の起伏への耐性を少しでも上げるワクチン的なものというか、夫婦関係も含めて家族と親子にこれから何が起こるのかということを読んでシミュレーションしておくことで、本番を迎える覚悟が決まりやすくなるのではないかと思います」 (取材・構成/「よみタイ」編集部 撮影/齋藤晴香)