大学サッカー界の名伯楽と永井謙佑を育てた指揮官のタッグで躍進。創部6年目で全国大会初出場&16強入り。福大若葉が踏み出した新たな一歩【総体】
「初出場で初優勝の目標は冗談ではなく、本気だった」
[インハイ3回戦]昌平 2-0 福岡大若葉/7月30日/JヴィレッジP5 創部6年目で初めて勝ち取った全国の舞台で戦う権利。誰もが胸を躍らせ、選手たちは本気で初出場・初優勝を目ざしていた。 【画像】堀北・ガッキー・広瀬姉妹!初代から最新19代目の藤﨑ゆみあまで選手権「歴代応援マネージャー」を一挙公開! だからこそ、3回戦で敗れた悔しさは何倍にも膨れ上がる。U-18高円宮杯プレミアリーグEAST所属で全国制覇の経験を持つ東福岡や、躍進著しい飯塚など、群雄割拠の福岡県予選を勝ち上がってきた福大若葉の戦いは、ベスト16で終わりを告げた。 福島県で開催されている令和6年度全国高校総体(インターハイ)の男子サッカー競技は、7月30日にJヴィレッジで3回戦が行なわれ、福大若葉は優勝候補の一角である昌平と対戦。自分たちのスタイルは発揮できなかったが、粘り強い守備と縦に速い攻撃に勝機を見出そうと試みる。 「夏の暑さがあるので、『インターハイでは引いて守るようなことはしない。高い位置でサッカーをしよう』と言ってきたけど、昌平の試合を分析した時に1失点までは自分たちにもチャンスがあると感じた。セットプレーやワンチャンスで巻き返せると思ったので、自分たちより先に入っても後から入っても、1点まではいいよと選手には伝えていた」(杉山公一監督)。 しかし、相手はプレミア勢で実績は十分。選手を見ても、世代別代表で活躍するMF山口豪太(2年)など各ポジションに逸材を揃えている。そんな相手にMF森部絢(3年)を中心に粘り強く戦ったが、前半25分に失点。後半に入っても巻き返せず、後半28分に追加点を奪われ、0-2で敗れた。 福大若葉は2019年に女子校から共学化され、男子サッカー部が創設された新鋭校。九州国際大付でFW永井謙佑(名古屋)を育てた杉山監督が指揮官に就任し、多くのJリーガーを育ててきた乾眞寛氏も系列校の福岡大で指揮を執りながら、総監督としてチームに携わる形で一から強化を図ってきた。 選手のスカウトも功を奏し、県内で戦える基盤を作り上げていくと、昨年1月には県新人戦で初めて決勝に進出。同年2月に九州新人戦に初参戦し、経験値を蓄積した。迎えた今季も2年連続で九州新人戦に出場。その流れを途切れさせず、今年6月のインターハイ福岡県予選では準決勝で東福岡を3-0で破った。決勝ではU-18高円宮杯プリンスリーグ九州2部で好調をキープしていた東海大福岡を1-0で下し、選手権も含めて初の全国大会出場を決めた。 高・大の一貫強化で勝ち取ったインターハイの舞台。2回戦からの登場となった今大会は、全国デビュー戦で阪南大高を撃破。0-1で迎えた前半24分にDF井上太智(3年)のゴールで追いつき、PK戦で初勝利を手にするなど、残した足跡は未来に繋がる大きな一歩だ。杉山監督は言う。 「子どもたちには『1試合だけで帰るのは嫌だよ』という話はしていた。本来であれば、合宿とか遠征でこの時期に鍛えていくなかで、なんとか3試合、4試合をして帰ろうと。公式戦で大津と対戦したいと子どもたちは話していて、実現しなくて落ち込んでいたけど、『そんなことよりも全国大会なんだから、プレミアリーグで戦っているチームとやって、今の力がどれくらいか知ろう。チャレンジャーでいいじゃん』という言葉をかけていた。でも、彼らのメンタリティを見ていくと、初出場で初優勝を果たす目標は冗談ではなく、本気だったというのも伝わってきた。ミーティングや食事会場での話を聞いていると、本当に逞しくなったなと思います」 挑戦は終わらない。夏の経験を財産とし、冬の選手権はもちろん、県リーグ1部からU-18高円宮杯プリンスリーグ九州2部への昇格を果たす目標もある。悔しさを胸に次の戦いへ――。福岡の新鋭はさらなる飛躍を目ざして走り続ける。 取材・文●松尾祐希(サッカーライター)
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