再建へ「最高の後押し」 「伝統的酒造り」無形文化遺産登録 県内関係者、技術継承誓う
●石川の地酒PRの好機に 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に「伝統的酒造り」の登録が決まった5日、石川県内の酒造関係者は、受け継がれた技術の継承を誓うとともに、能登杜氏(とうじ)の伝統が息づく「酒どころ石川」の盛り上がりに期待を寄せた。能登半島地震や奥能登豪雨で深刻な被害を受け、再建途上にある酒蔵も「最高の後押し」と喜び、今冬の酒造りへ一層気合を入れた。 無形文化遺産登録について石川県酒造組合連合会長の車多一成さん(55)は「伝統ある石川の地酒を国内外にPRする絶好の好機となる」と期待。福光屋(金沢市)の福光松太郎社長も外国人の日本酒への関心の高まりを見込み、「登録を励みに、引き続き時代に合った日本酒を作りたい」と決意を新たにした。 鳳珠酒造組合によると、能登半島地震で奥能登4市町の日本酒の11酒造会社のうち、地元で醸造するのは現在2社。他の酒蔵は、加賀の酒蔵との共同醸造や、全国の酒蔵との連携事業などで再建を目指す。 車多さんが営む車多酒造では来年2月、地震で珠洲市の建物が全壊した櫻田酒造4代目の櫻田博克(ひろよし)さん(53)が今季の酒造りを行う。鳳珠酒造組合長で、今は金沢市のみなし仮設住宅に住む櫻田さんは「能登の酒蔵再建へ最高の後押しになる」と喜んだ。 地震で被災した建物の解体が終わり、酒蔵のタンクなどの新調を進める輪島市の白藤(はくとう)酒造店代表の白藤喜一(きいち)さん(51)は「能登の酒の消費拡大につながる。早く酒造りを再開させたい」と力を込めた。 奥能登で酒造りを続ける老舗2社にも喜びが広がった。宗玄酒造(珠洲市)の社長、八木隆夫さん(61)は「酒造りへの評価は、酒蔵がある地の文化、風土への評価。気を引き締めて酒造りを続ける」と語り、数馬酒造(能登町)の5代目数馬嘉一郎さん(38)は「今回の登録は、先人が努力を積み重ねてきた結果。次世代につなげていきたい」と意気込んだ。 奥能登は古くから、全国で酒造りの指揮を執る能登杜氏の名人を多く輩出してきた。能登杜氏組合長で、現在、静岡県富士宮市で酒造りに励む四家裕(しやけ・ゆたか)さん(67)=能登町=は「酒蔵は酒造りのやり方や道具を次の世代に残し、杜氏は経験をいかに後世に伝えるのかが重要になる」と無形文化遺産の重みを受け止めた。 「伝統の酒造り」の無形文化遺産登録では焼酎業界も喜びに沸く。珠洲市にある県内唯一の焼酎専門メーカー「日本醗酵(はっこう)化成」は地震被害からの復旧を進め、11月下旬に出荷を再開。取締役の藤野裕子さん(46)は「登録のニュースは、前を向いて進めるきっかけになる」と喜んだ。