孤立無援な盟友プーチンの足元を見る習近平、「ウラジオストク軍港の常時利用」と「台湾有事参戦」をひそかに要求か
■ ロシアにとってウラジオストク港が重要拠点である理由 今回の中ロ首脳会談では、表向きには経済や貿易、エネルギー分野のさらなる協力が重点的に協議されたと両国は説明するが、中国に詳しいある軍事専門家はこう見る。 「プーチン氏は戦争長期化と国際的孤立、ロシア経済の息切れを懸念しているため、習氏は完全に足元を見ているはず。そこで習氏はプーチン氏を今後も支援する見返りに、ついに『ウラジオストク軍港の常時利用権』『台湾有事でのロシア参戦』の2条件を切り出したのではないかと外交筋の一部で囁かれている」 「ウラジオストク軍港の常時利用権」については、以前当サイトでも詳述している(メディアが騒ぎ立てる「中国が165年ぶりにウラジオストク奪還」の現実度/2023年10月1日公開)。 中国北東部(旧満州)に隣接するロシア領一帯は「極東ロシア」「沿海州」と呼ばれ、かつて中国(清国)領だった。 19世紀半ばになると、中国の植民地化を虎視眈々と狙う欧米列強は、1840年のアヘン戦争、1856年のアロー戦争(第二次アヘン戦争)で清国が連敗したのを合図に、中国大陸へ続々と進出し、半植民地化を進めた。 ロシアも同様で、当時東方へと征服地を拡大。ついに太平洋まで達すると、戦略上不可欠な日本海の不凍港の獲得を画策した。そして、強大な軍事力を背景に清国を脅し、1858年のアイグン条約、1860年の北京条約を通じて併呑したのが極東ロシアや沿海州である。 沿海州には不凍港のウラジオストクがあり、ロシア海軍の太平洋艦隊が司令部を置き、同国のアジア太平洋戦略上、非常に重要な拠点でもある。 仮想敵の日米が日本海の対岸に布陣し、近くには「ロシアの湖」と自負するオホーツク海が控える。ロシアはこの海域に水中発射型の核弾道ミサイル(SLBM)を多数積む巨大原子力潜水艦(SSBN)を10隻以上潜航させ、万が一の核戦争に備える。 ロシア核戦略の「根幹中の根幹」とも言うべき“聖域”で、同海域の警備は太平洋艦隊の最重要任務でもある。 こうした背景があるウラジオストクだけに、友好国の中国とはいえ、港湾の門戸開放には慎重にならざるを得なかった。しかも「開放したら最後、これを突破口に徐々に間口を広げ、最後は返還を迫るのでは」と、ロシア側は警戒しているという。