「闇バイト」を検索するだけなら大丈夫と思っていた…「虫も殺せない青年」が強盗犯になり人生を棒に振るまで
■元非行少年だった私がどうしても伝えたいこと 不登校で不良だった筆者は、中学を卒業後、17歳でブランドショップのアルバイトに採用され、19歳の時にデザイナーとして就職した。同輩や先輩から「中卒は天然記念物」と馬鹿にされたことを契機に、23歳で一念発起し、通信制高校、大学、大学院と進学することで学び直しを試みた。 チャレンジを重ねることにより、筆者は不良の道から外れ、更生することができた。学び直しは、残念ながらひとりではできない。多くの先達が背中を押し、教導し続けてくれたからこそ、20代前半に自ら設定した指標を(10年以上かけて)達成できたのだ。 筆者はこの過程で気づいたことを、若いみなさんにのこしたいと思う。それは、「人間は裏切ることがあるけれども、学問は人間を裏切らない」、「手に職を付けたとしたら、泥棒だろうが権力者だろうが、誰もそれを奪うことは出来ない」ということ。 だから、筆者は、非行や犯罪に手を染めてしまった若者に対して、手に職を付けるか、勉強して学歴を得るかするために(通信制の高校や大学など、お金が無くても進学可能な進学先はある)、人生の内でほんの数年間だけでも一生懸命に何かに打ち込んでほしいとアドバイスしている。 ■闇バイトの先に待つのは破滅だけ 若い皆さんに不可能はない。夢を大きく持ち、目標を見いだしてほしい。そして、目標を定めたら、その目標に至る道を自分で調べ、チャレンジしてほしい。たくさん失敗し、挫折を味わってほしい。若い時の失敗や挫折は、後年、必ず人生の糧となる。 若いうちに頑張って、泥棒からも権力者からも奪われない「あなただけのスキル」を身に付けるべきだ。そうすれば、闇バイトなどせずとも、お金は十分に得られるはずだ。 昨今の闇バイト募集は巧妙になっている。ネット求人などの一般求人に紛れているケースもある。もし、闇バイトに引っかかってしまったら、躊躇(ためら)わずに「#9110」に電話して警察に助けを求めてほしい。 全国の警察は「指示役などに脅されても必ず保護する」というメッセージを出し、実際に10月26日には、闇バイトを抜けた3人を保護している。 闇バイトの先に待つのは破滅だ。貰えるか分からない少額のお金のために、一生を棒に振らないでほしい。 ---------- 廣末 登(ひろすえ・のぼる) 龍谷大学嘱託研究員、久留米大学非常勤講師(社会病理学) 博士(学術)。1970年福岡市生まれ。北九州市立大学社会システム研究科博士後期課程修了。専門は犯罪社会学。青少年の健全な社会化をサポートする家族社会や地域社会の整備が中心テーマ。現在、大学非常勤講師、日本キャリア開発協会のキャリアカウンセラーなどを務める傍ら、「人々の経験を書き残す者」として執筆活動を続けている。著書に『若者はなぜヤクザになったのか』(ハーベスト社)、『ヤクザになる理由』(新潮新書)、『組長の娘 ヤクザの家に生まれて』(新潮文庫)『ヤクザと介護――暴力団離脱者たちの研究』(角川新書)など。 ----------
龍谷大学嘱託研究員、久留米大学非常勤講師(社会病理学) 廣末 登