「闇バイト」を検索するだけなら大丈夫と思っていた…「虫も殺せない青年」が強盗犯になり人生を棒に振るまで
■普通の青少年が重大事犯者になる 現代社会では、SNSの普及により犯罪誘発の機会が無数に存在する。 ---------- 「お金が欲しい」→「掲示板、ツイッター(X)を検索」→「ホワイト案件など闇バイト募集広告を見る」→「応募」→「犯行」 ---------- という機会選択から、重大な犯罪に簡単につながる。 そんな意図を持たない普通の青少年でも、指示役の言葉に騙され時に脅され、気づいたら重大犯罪の加害者になってしまう可能性がある。これが闇バイトの怖さだ。 このことは、ルフィ事件の実行犯だった青年(犯行当時21歳)による生々しい証言からもよくわかる。 起訴状によると、青年は「ほかの数人と共謀して広島市西区にある時計等買い取り専門店の店舗兼住宅に押し入り、住人男性を殴るなど親子3人にけがをさせ、現金や腕時計などあわせて約2700万円相当を奪ったとされた」事件を起こした。 以下、RCC中国放送が報じた記事〔「守らなければならない優先順位を間違っていた」闇バイトで加担した“ルフィ事件”実行役の青年(22)が語ったこと〕の一部を紹介したい。 青年は、最初から闇バイトを選択したわけではないという。借金苦から追い詰められて闇バイトという機会を選択しなくてはならないと思い込むようになっていったと話す。 ■「人を殴れない」と語った青年だが きっかけは友人への借金だった。アルバイトがクビになると生活は一気に苦しくなった。彼らへの返済期日が近づく中、新規のアルバイトも見つからず、闇金融に行くも取り立てが厳しく返済には至らない。臓器を売ることもよぎったが現実的ではない。 友人からのプレッシャーもあり心理的に追い込まれていき、「どんどん“闇バイト”の方に行ってしまったのだと思います。初めて“闇バイト”を検索しました。検索するだけなら……とそういうこと(怖いものだと)は思いませんでした」(実行役の青年) SNSを介し指示役と思しき人物と繋がった。その人物に「掲示板から来ました」と伝えると、「グレーな仕事です」と返信が来たという。怖くなり、一度は連絡を絶った。しかし、借金苦から再び闇バイトを検索した。 前回とは別の闇バイトを選択。指示役に対して、青年は「犯罪にならないのならやりたい」と回答。指示役から言われたのは「家族がグルになっていて、家の中で手引きしてくれて、簡単に家に入れる強盗」だったという。 「(指示役から「ターゲットを殴ったり蹴ったりできるか」と言われたことに対し)今までそんなことをしたことは一度もないし、普通に考えてできないと思っていました。考えがまとまりませんでした。逃げたいけれど、人のことも殴れないし、どうしようと。どうしようと思っていたら現場に着いてしまいました」(同) 青年の容姿は、どこにでもいそうな、ごくごく普通の青年だ。「人を殴れないと思った」と言うように、借金さえなければ人を殴ることはおろか、虫をも殺さぬ男なのだろう。しかし、その青年について、検察側は「被害者に暴行を加え積極的に行動した」と、論告求刑時に述べている。 この青年の話は、記事冒頭の少年が語った「現場に行ったら無我夢中ですよ」という主張と重なるものがある。SNS上で犯罪を「選択」した青年の末路は悲惨としか言いようがない。 裁判では「暴行を加えて被害者を制圧する強盗の計画を分かっていたのに報酬のために実行に加わったことは強く非難されるべき」などとし、懲役14年の判決が言い渡されており、安易な「選択」の代償はあまりに大きいものだった。