沼津・消えた投票所入場券 504通印字漏れ、発送せず 総数確認不十分
10月の衆院選で沼津市の一部地域に投票所入場券が届かなかった問題で、市選挙管理委員会(小宮山克己委員長)は15日、市役所で記者会見を開き、今沢と松長の両地区で計504通、911人分の入場券が印字・作成されず、発送されなかったと明らかにした。作業の遅れによる混乱から、通常行う作成総数の把握を最初に行わなかったことなどずさんな管理体制が浮き彫りになった。 同市の投票所入場券は、業者が印刷した台紙に住所・氏名、投票所などを世帯ごと1通にして市役所で印字する。市選管の池谷志津子事務局長は印字されなかった原因を「システム操作の誤りか、ファイルの破損」と説明。システム上で、本来送るべき全8万9538通の印字命令がされていたが、このうち同じ第19投票区の一部が連番で印字されなかった。 市選管によると、必要な入場券の総数はシステム上表示されず、通常は投票区ごとに出る小計を合算して把握していた。今回は委託業者の選定に時間がかかり、入場券の発送が遅れたため、作成できた分から3日間に分けて順次発送する異例の取り扱いをした。 その際、印字開始前に総数を把握せず、発送2日目に集計。何らかの理由で集計を誤り、504通少なく、実際に印字された8万9034通を正しい総数と認識し、投票日まで気づけなかったという。集計作業は本年度から選管事務局に異動した職員1人が担当。池谷事務局長は「発送の遅れで焦りがあった」と釈明した。 小宮山委員長は「総数確認が不十分だった」とし、「選挙という市民の重要な権利行使の機会においてご迷惑をおかけした」と陳謝した。入場券が届かなかった市民に文書で謝罪し、職員の処分を検討するという。 ■住民「だらしない」 管理態勢に厳しい声 有権者の住所、氏名などの情報を印字する沼津市選挙管理委員会の作業に漏れがあり、10月の衆院選で今沢、松長地区の911人分の投票所入場券が発送されなかったと同選管が発表した15日、両地区では当初懸念されていた入場券紛失による個人情報の漏えいがなかったことで安堵(あんど)の声が聞かれた一方、選管の管理態勢に対する厳しい声が上がった。 入場券が未着だった松長地区の50代男性は「個人情報が守られたのがせめてもの救い」と述べた。今沢地区の50代女性は「印字されていないのなら初期の段階で分かるはず。公的機関としてあり得ないし、だらしがなさ過ぎる」と憤る。 高島修二松長自治会長は今回のミスは決して許されないとし、「確認体制を見直して、二度と繰り返さないでほしい」と求めた。
静岡新聞社