ホンダ「シビック」がマイチェンして人気化した訳、新設定のMT専用「RS」のマニアックな世界観
ホンダが2024年9月に発売した改良版「シビック」。マイナーチェンジ、かつ、月間販売目標500台の車が業界で話題になっている。その理由や乗り味をモータージャーナリストの島下泰久氏が解き明かす。 本稿は、『2025年版間違いだらけのクルマ選び』につづった評をお読みいただきたい。 【写真】シビックRSは一般道からワインディングロードまで、走りの歓びを味わえる ■MT専用のRSが20代に人気 シビックの新型が、しかもマイナーチェンジにもかかわらず、界隈でこれだけ話題になるのはいつ以来のことだろうか? 2024年9月に発売された改良版シビックの約1カ月経過の時点での受注台数が、計画の約6倍にも達したというのだ。
もっとも、ひと月の販売目標は500台に過ぎないわけだが、それにしても、いやそれだからこそ、この数字は驚きと言える。しかも、そのうちの67%は新設定のMT専用グレードであるRSで、ユーザーの多くは20代だと聞くと、一体何が起こっているんだろうと思う人も多いだろう。 現行シビックの国内デビューは2021年9月。この時から1.5Lターボエンジン搭載車にはCVTに加えて6速MTが設定されており、しかも予想を超える数が売れていた。いや、更に遡れば先代、つまり10代目シビックの日本再投入の際にも、やはりMT車が用意されていて、私もこの本で高く評価したのを覚えている方も居られるはずだ。
つまり急にMTが人気になったわけではなく、ホンダが地道に種を蒔いてきた結果としての、今回のRSのスマッシュヒットと見るべきである。あるいは逆の見方をすれば、響いてくれるであろうユーザーが居ることは分かっていたからこその、RSの新設定だったとも言えるだろう。 もちろん、他社のモデルから続々とMT車が姿を消していることも影響したのは間違いない。いつまでも受注再開とならないシビック・タイプRの納車待ちから流れてきた人も居るのかもしれない。
いや、何より忘れてはいけないのがシビックRSが走りの楽しいクルマだということである。MTだからって速さ最優先のリアルスポーツではなく、一般道での普段使いや、心地良いペースで流すワインディングロードで、走る歓びを味わわせてくれるのが、シビックRSなのだ。 見た目の差別化は最小限で、外観は各部をブラック仕上げにして前後にRSのバッジを付けた程度。内装もブラック主体で挿し色としてレッドを使ったぐらいの違いしかない。