ホンダ「シビック」がマイチェンして人気化した訳、新設定のMT専用「RS」のマニアックな世界観
フットワークも、クルマとの一体感の強さが印象的だ。操舵感は心地よく、ロールが適度に抑えられたハンドリングも胸躍らせる。特に右に左に切り返すような場面での身のこなしの良さには、思わずペースが上がってしまう。 シビックRSが表現しているのは、原初的と言ってもいいクルマを操る楽しさ。今の時代に、こういうクルマが支持されたことには嬉しい気持ちにさせられた。いや、こういうクルマを出してくれたことには、と言うべきか。とりわけ走りの話になると、ついやり過ぎてしまいがちのホンダが、速さは程々に味を追求した結果が、いいかたちで出たことは間違いない。
■シビック自体の改良もツボ RSの話ばかりしてしまったが、シビック自体の改良もツボを突いている。まず、2モーターハイブリッドのe:HEVは従来の1グレードから、より幅広いユーザーにアピールするべくLXとEXの2本立てになった。明るいグレーの内装が追加されたのも嬉しい。 装備の面ではGoogleの搭載がトピックだ。シビックが初搭載ではないが、地図、アプリなどを利用できるのはもちろん、音声操作によってナビゲーションやオーディオ操作、更に温度調整など車内の機能操作も行なえるようになったのは大きい。特に目的地設定などは音声で行き先を言うだけで済んで煩わしさがなく、若干大げさに言えば、クルマでの移動体験そのものの変革だなと感じたほどである。
まさしく、かつては国内市場からの撤退も余儀なくされたシビックの復権と言っていいだろう。私としては、同い年の仲間が再び元気になってきたということでもあり、何とも嬉しいのだ。
島下 泰久 :モータージャーナリスト