遠藤章さん「歯みがきガム」も開発 カビなどから有用物質を見つけ出す微生物博士
5日に90歳で死去した東京農工大特別栄誉教授の遠藤章さんは、カビなどの微生物から、さまざまな有用物質を見つけ出す「微生物博士」として知られた。発見した物質は医薬品だけでなく、菓子や健康補助食品にも応用されている。 【写真】「世界で一番売れている薬」を開発した遠藤章さん 大学卒業後、大手製薬会社の三共(現第一三共)に入社。都内の食品工場の製造現場に配属された。1年後には早くも果汁などの清澄(せいちょう)化に使う酵素「ペクチナーゼ」の大量生産菌を発見。入社2年後の昭和34年に商品化された。 驚異的なスピードで成果を挙げた功績を会社も高く評価し、米国留学を許可した。41年には東北大で学位も取得した。 退社後は東京農工大農学部で研究を続け、歯垢(しこう)の形成を強力に阻害する物質「ムタステイン」をカビから発見。57年にはラットを使った実験で虫歯予防効果を証明した。61年にはこの物質を使ったチューインガムをロッテが製品化し、歯みがきガム「NOTIME(ノータイム)」の商品名で発売した。 中国などで古くから酒造りなどに使われてきた紅麹(べにこうじ)の研究にも取り組んだ。 東京農工大を退職後もバイオファーム研究所(東京)を設立し、研究活動に意欲を注いできた。その原動力について遠藤さんは「人の役に立ちたかったから」と語っていた。