一橋卒→“ドラァグクイーン界の仏”に…52歳になったエスムラルダが語る、嫉妬しなくなった理由「若い頃は、コンプレックスの塊だった」
本当に自分に必要なものは、必要なときに与えられる
――どのようにして、その境地に至ったんでしょう。 エスムラルダ コンプレックスに関することを文章に書いて昇華できたこと、会社を辞めたことが大きかったかな。それまではちょっと自分の人生に無責任で、いろいろなことを人のせいにしていたんですよね。会社の仕事はどこか「やらされてる」って感じてたし。でもフリーになったことで「これは自分が選んだ人生なんだ」って気持ちが強くなった。 応援してくれる人たちや、そのままの自分を受け入れてくれる人たちの存在も大きいですね。セクシャリティを受け入れてくれた家族とか、30年前から恋や仕事の悩みを全部聞いてもらっていたゲイバーのマスターとか。 あと、年齢を重ねて、いろいろな人を見てきてつくづく思うのが、欲しいものを全部手に入れることなんてできないし、いいものも悪いものも含め「本当に必要なものは必要なタイミングで与えられる」ということ。だから、足りないことに腹を立てたり、嫌なことを引きずったりしなくなりました。 ――「置かれたところで咲きなさい」という言葉が腑に落ちる感じですね。 エスムラルダ そう。若い頃ってなんでも欲しくなるじゃない。特に恋愛とか、お金とか、成功とか。わかりやすく自分を幸せにしてくれそうなものを欲しがるし、手に入らないと苦しい。でも、それを手にしたからといって必ず幸せになるわけではないし、良くない出来事が成長や幸せをもたらしてくれることもある。 昔から、間違った選択をすると、なぜか必ず軌道修正されてると感じてるの。たとえば大学のゼミも、ミーハーな気持ちで入ろうとしたところは全部落ちて「質実剛健」って感じのところに入ることになって……最初はショックだったけど、結局はそのゼミで学んだことが、自分の背骨みたいになった。 そういうことが何度かあったので、運命論者っぽくなっちゃったかもね。もちろん努力は必要だし、煩悩もいまだにたくさんあるけど、どうしても手に入らないものは、きっと自分には必要がないんだなと思うようになった。 ……あ、それから、自分にツッコミを入れることも大事! ――自分にツッコミ?……とは、どういうことでしょう?