武士道の本質、利のある敗北後のベルギー戦。新たな日本文化の大局的勝利を
サッカーに負けてワールドカップに勝つ
もちろんリスクはある。というよりかなり高い。これは汚いやり方だが上手くいくという選択ではなく、汚いといわれるだろうし上手くいくかどうかも分からないという選択だ。失敗すれば味方からも批判を免れない。選手からも自分たちを信頼しないのかと思われる。またこの方針を選手たちへどう伝えるかも問題だ。「無理攻めをするな、守りを徹底させろ、ボールをまわして時間を稼げ」、そのうちのどれにするか。 西野は迷った。 確率的に最善の選択はどれか。 西野は計算した。スタッフたちも計算した。 そして全責任を負う覚悟をした。 メンバー交代で長谷部を入れ、ワールドカップ史上にも例を見ない思い切った作戦を徹底させ、見事に勝利したのである。 「相撲に勝って勝負に負ける」という言葉がある。 圧倒的に優勢だったのに、勇み足など、ちょっとしたミスで負けることだ。この試合はどうか。勝負にはもちろん負けである。サッカーに勝ったともいえない。しかしワールドカップの一次予選ルールには勝ったのだ。 「サッカーに負けてワールドカップに勝つ」 前代未聞の戦略である。 この歴史的な決断に立ちあった観客は決してバカにされてはいない。
ロシアとポーランドと日本
小生はこれがロシアということもあって、日本海海戦の敵前大回頭を思い起こした。 ロシアのバルティック艦隊を迎え撃つ日本の連合艦隊は、互いに向かい合って直進するなか、突然、敵前で舵を切って曲がりながら、敵の先頭艦に集中砲火を浴びせたのだ。通常の戦法では、敵に横腹を見せるということはありえないが、波の高さと砲の命中確率とを計算した大英断である。敵艦は次々と撃沈、海戦史上稀に見る大勝利を収めたのである。 西野は東郷の再来か。「西」の「野」と「東」の「郷」で名前も似ている。ひょっとするとポーランドがあえてボールを取りに来なかったのは、ロシアに対する地政学的反感による親日国ということもあったかもしれない。ポーランド建築学会の招きで訪れたことがあるが、きわめて親日的な国だ。フィンランドやトルコには「トーゴー」という名のビールや通りがあり、子供の名前にもなっているが、それと同様である。(調子にのって言い過ぎてはいるが……)