【パキスタン代表監督奮闘記(2)】気温40度、薄茶色の水…過酷な練習環境
会議室が借りられず、青空の下でミーティングするパキスタン代表
パキスタンに来て、日本・アメリカではなかった衛生面の過酷さにも直面している。今回の合宿にて、半分以上の選手が体調不良を訴えた。専門家ではないので、原因を断定できないが、不衛生な環境と水なのではないかと思っている。野球連盟という小さな組織だけでは、こういった環境的要因の払拭までは非常に難しい。
この水を飲めばお腹を壊す、しかし…
選手達の生活環境は、国を代表するアスリートとしては、あまりにも過酷だった。20人の大人が2つのロッカールームに分かれ、地べたにマットレスを敷き雑魚寝をし、時に地べたで食事をすることもある。また、エアコンはあるが、外が暑い反動で部屋は常にギンギンに冷やされている。誰かが、風邪をひくと、風邪は拡大する。練習で疲れた身体に、風邪をひいている選手がいれば尚更である。
何よりも一番の大きな問題は練習中である。40度の世界で水しかない。コップは使い回し、足りなければジャグの蓋で水を飲む。水がなく、練習が中断したこともあった。時に薄茶色の水を、自分でペットボトルに持ってきて飲んでいる選手さえいた。私は、練習を継続させるために、なんの根拠もない「大丈夫だろう」でそのまま水を飲ませる自分が怖かった。限られた時間で効率のいいチーム練習をしなければ、合宿は前へ進めない。しかし、この水を飲み続ければお腹を壊す。当然のように、練習では常に誰かが体調不良で欠け、一歩進んで二歩戻る毎日だった。
ホンダバイクのライバルは「ロバ」
貧富の差が激しくイスラム国家であるパキスタンでは、富裕層の生活が見えにくい一方で、貧困層の生活はさらけ出されている。私が滞在するラホールでは、バイク、ロバ、三輪タクシーなど様々な乗り物があらゆる方向に走っている。逆走、横切り、何でもありなのだ。またパキスタン人にとって、ロバは重要な存在であり、ホンダバイクのライバルがロバだというのだから驚きだ。時間にあまり急ぐことのないパキスタン人にとって、ロバでも十分ということだ。また、ロバは10人まで乗せることが可能で、大家族の多いパキスタン人の生活を助けてくれる存在なのだ。