【トランプ新政権が巻き起こす米中関係の波乱】国際秩序の混乱をどう読み、備えるか
2024年11月6日、共和党のドナルド・トランプ前大統領(第45代)が選挙戦で勝利をおさめ、第47代大統領として返り咲くことが決定した。共和党は、同時に実施された上院改選でも多数派を掌握し、下院改選でも過半数を制する勢いで、来年1月に発足するトランプ新政権は、盤石の基礎で始動することになる。 このトランプ再選とは、20世紀における理念と知性に基づく、いわゆる「アメリカン・デモクラシー」の衰亡であり、一方では為政者と大衆の欲望が共鳴して民主制の名の下に成立する古典的な「暴民政治」が、装いも新たに21世紀の「アメリカン・デモクラシー」として降臨したことを意味する。それが今後のアメリカの内政・外交だけでなく、世界にも大きな衝撃を与えることは容易に想像できるし、この不安定性と不確実性は、トランプ個人の資質・性格によって大きく増幅するであろう。 特に外交・安全保障面では、適切な経験や知見を持った専門家が、次期政権に集う可能性の低い点が懸念される。前回のトランプ政権は、外交・安全保障の現実的なメカニズムに疎く、自己解釈と感情に強く左右される大統領を、国家への義務感から就いた補佐官や閣僚たちが何とか支えてバランスを取ることで、持ち堪えてきた。しかし4年間で3人の安全保障担当補佐官が更迭されており、その当事者たちの回想を読む限り、当時の状況は常軌を逸している。まして次期政権に専門家たちが集わないとすれば、混乱に拍車がかかるであろう。 実のところ外交面における「アメリカ第一主義」とは、アメリカの宿痾の一つとも言える「孤立主義」の看板を掛け換えたものに過ぎない。それは20世紀の世界帝国として君臨したアメリカの影響力を、大きく削ぐものである。 この結果、既存の世界秩序はさらに大きく動揺するであろうし、もはや修復不可能なものとなる危険性もある。これは同時に、アメリカの敵対者たちにとっては、予測不可能な対応をしかねないトランプという危険要素はあっても、長期的趨勢としては望ましいものであることは間違いない。