『ブラックペアン2』S1を想起させる描写が随所に 母の手術をめぐる天城と渡海の対称性
天城(二宮和也)を救うために、医療用AI“エルカノ”を使って佐伯(内野聖陽)がダイレクトアナストモーシスに挑む。ところがその矢先、緑内障によって視野が欠け手術の続行が難しくなる。そこへ現れたのが、天城の双子の弟である渡海征司郎(二宮和也/二役)。9月8日に放送された『ブラックペアン シーズン2』(TBS系)第9話は、久々に“オペ室の悪魔”の姿とその技量を拝むところから幕を開けるのである。 【写真】もう一度の登場が期待される渡海(二宮和也) ダイレクトアナストモーシスを「ギャンブルみたいなこと」と嘲笑し、“エルカノ・ダーウィン”をオペ室に持ち込んだ渡海。その最新技術にサポートをさせながら佐伯がダイレクトアナストモーシスを行ない、同時進行で渡海は“佐伯式”を行う。そういえば、シーズン1では物語全体の要として頻繁に登場していたものの、シーズン2では後半戦に入ってからなんの説明もなしに再登場している“佐伯式”についておさらいしておく必要があるかもしれない。 公式サイトにある「監修ドクターが解説 片っ端から、教えてやるよ。」のVol.4にわかりやすく書かれているが(※)、簡潔に言えば、本来は安全に心臓を止めて行なわれる僧帽弁手術を、人工心肺を使ってオンポンプ・オンビート、すなわち心臓を動かしたまま行うというのが“佐伯式”。元々は世界中でただひとり、佐伯にしかできない術式であったわけだが、シーズン1の終盤で渡海は高階(小泉孝太郎)が操作する手術支援ロボット“カエサル”を遠隔で動かし、佐伯本人に対しての“佐伯式”を成功させているのだ。 つまりは今回描かれた、最新技術である“エルカノ・ダーウィン”を活用して、世界で天城しかできないといわれるダイレクトアナストモーシスで天城本人を救うという流れは、シーズン1を反復させるものといえるだろう。またもうひとつ、シーズン1を想起させる描写が。それは天城が世良(竹内涼真)に話す、ダイレクトアナストモーシスを始めたきっかけだ。天城がフランスで医師として力をつけたばかりの頃、母親――つまり育ての母ということになるが――のオペを執刀し、なんとか彼女を救うために論文で読んだ内容を頼りに無我夢中で挑んだもので、天城はこれを“神が僕に与えた産物”と形容する。 シーズン1の第6話では、渡海の母親(いまになって考えれば、それは天城の母親でもある)が東城大に緊急搬送され、先述の手術支援ロボット“カエサル”の治験患者第一号としてオペが行われた。しかしカエサル手術はうまくいかず、渡海は東城大の規定を破って自らオペを執刀し、なんとかその命を救ったのである。最新技術を差し置いて自分の腕ひとつで母親の命を救った渡海と、まだ未熟だった技術で母親の命を救えなかった天城。ここにもまた、この双子の対称性が現れているといえよう。 さて、当の渡海は冒頭数分で天城を救って再びこの物語から姿を消すことになった。おそらく再登場はないのかもしれない。目を覚ました天城を待ち受けていたのは、新病院に向けた“最後の仕上げ”として佐伯から提案される新たな公開オペ。そして、かつて天城の育ての父である天城司(大和田伸也)が手術を執刀したと記録が残されている“徳永栄一”という患者の存在に、天城司が死の直前に残した「ブラックペアンの約束は破られた」という言葉。父の無念を晴らすべく佐伯と対峙するようなこの構図もまた、シーズン1と通じているものだ。シーズン2の終幕を飾るであろうこの公開オペは、天城が自らに対して課した“シャンスサンプル”というわけか。 参照 ※ https://www.tbs.co.jp/blackpean_tbs/teachings/
久保田和馬