思春期の「健全な反抗」と「危険な反抗」は別物…精神科医は荒れる子とどう向き合う?
荒れる子の心を健全にするには
反抗期は、一般的に3歳前後と、就学前後、そして思春期にあるといわれていますが、この時期は、子どもが急速に成長・発達するときです。成長するために、反抗していると思っておいて間違いないでしょう。 人が大人になるのには、依存も反抗も必要なことなのです。ですから、親に対してどんな言葉を投げつけようが、先生に対してどんな態度をとろうが、あれこれいわないほうがいいのです。 子どもはそれが必要だからしているのです。今まで歩んできた人生のなかの補えるところで、不足分を補おうとしているのです。親にしてもらえなかったことがたくさんあって、それを反抗というかたちで腹いせしているのかもしれません。 親としては、「私のことを信じるために、この子には今こうすることが必要なんだ」と見守ってあげることが大切です。親を信じているから安心して反抗できる、あるいは信じたいから反抗しているといってもいいでしょう。 リストカットや摂食障害、不登校などは子どもの心が荒れている証拠です。愛情を欲しているサインです。 そこから立ち直らせるためには叩いたり叱ったりしてやめさせるのではなく、抱きしめることです。しっかり保護してあげればいいのです。 どんなに激しく反抗していても、問題行動をとって"荒れ"ていたとしても、親が子どもをしっかり受けとめ、子どもが望んでいることを満たしてあげれば、必ず立ち直れます。 「抱きしめる」というのは、体をただ抱きしめるだけではありません。あなたのすべてをまるごと受けとめるよ、という意思表示でもあるのです。 話をゆっくり聞いてあげる。思春期の子の心を抱きしめるうえでいちばん大切なことは、この「話を聞く」ということです。家事や仕事で忙しかったとしても、子どもが話しかけてきたら、手を休めて、子どもの目を見て話を聞いてあげてください。 興味をもってうなずいたり、「すごいね!」など感嘆したりしながら聞いてあげると、「お父さん、お母さんは自分の話をよく聞いてくれるからうれしい」と思い、さらに積極的に自分の話をするようになります。よく話をするようになったら、よい経過をたどっていると考えてよいでしょう。 ポイントは、息ながく、根気よくです。「育てる」ということは、子どもに限らず草花や農作物でも同じことでしょう。芸術家や技術者がすぐれた作品や製品をつくるのと同じように、日々根気よく、手塩にかけることです。 【まとめ】不安定な思春期だからこそ、「あなたのことをまるごと受けとめるよ」という心と体を抱きしめることが大切なのです。
佐々木正美