田中耕一さん「ノーベル賞より感慨深い」…開発に携わった質量分析計が「マイルストーン」認定
2002年にノーベル化学賞を受賞した島津製作所(京都市中京区)の田中耕一・エグゼクティブ・リサーチフェロー(65)らが開発に携わった同社の質量分析計「LAMS―50K」が、社会の進歩に貢献した製品などに贈られる「米国電気電子学会(IEEE)」の「マイルストーン」に選ばれた。田中さんら開発者は15日に本社で開かれた記念式典に集まり、喜びを見せた。(矢沢寛茂)
IEEE(アイ・トリプルイー)は電気・電子技術分野の世界最大の専門家組織。誕生から25年以上経過した製品や技術を対象に、マイルストーンを認定している。日本では過去に、シャープの「電卓」などが選ばれている。
島津製作所の質量分析計は、田中さんのノーベル化学賞受賞につながった技術を応用し、1988年に発売された。田中さんは、たんぱく質などの巨大分子を壊さずにレーザーを当ててイオン化し、質量を測定する手法を開発。その後、質量分析計の活用と開発が世界中で進み、現在の生物学や医学に欠かせない装置となっている。
「ノーベル賞の時より感慨深かったかもしれない」。式典の前に開かれた記者会見で、田中さんはそう喜びを表現した。
「ノーベル賞は夢にも描けない名誉だったが、私だけの評価はアンフェアとも思っていた。今回の認定で私を含めた5人で開発、達成した意義などを紹介できる機会をいただいた」と述べ、開発チーム全体の功績であることを強調した。
さらに、かつて東北大工学部電気工学科でアンテナ工学を専攻したことに触れ、当時の教科書や開発当時の電子回路の基板を手に「大学にも恩返しができた」と笑顔を見せた。
記念式典では、田中さんは開発者仲間の吉田多見男さん、吉田佳一さん、秋田智史さん、井戸豊さんと一緒にIEEEから同社に贈られた銘板を囲み、記念撮影した。
田中さんと入社同期(1983年)の山本靖則社長(65)は「ノーベル賞の時は本当にびっくりした。あの熱気を覚えている。長い時間を経て、チームで作り上げた革新的な製品が認定され、格別の喜びだ。改めて敬意を表したい」とたたえた。