外食は年間600回以上! マッキー牧元の発掘! 地方の名店~富山編~
サクッと噛めばほのかな苦みが飛び出て、それが甘めのそばつゆと馴染むのであった。
立山そば JR富山駅構内店
住所: 富山県富山市明輪町1-227 JR富山駅内 TEL: 076-431-2104
店内はカウンター席とテーブルがあり、カップル客が楽しそうに料理を頬張っていた。 やがて黒板に手書きされたメニューが運ばれてくる。料理名を見た瞬間、笑みがこぼれた。王道のフランス郷土料理がずらりと並んでいるではないか。これは悩む。
右顧左眄。戸惑い。逡巡。頭の中に文字が浮かんで、思いは千々に乱れる。 さあ、アントレはどうしようか。地物と書かれたベニズワイガニ、イワシ、バイ貝は食べたいな。しかし本命は、フロマージュテッドにブーダンだろう。
「シャルキュトリーはどんな盛り合わせですか?」 「自家製のハムとソーセージ、レバーのテリーヌに今日はハツと砂肝のコンフィも入っています」 やめてくれ。そう言われたらなおさら悩むじゃないか。 そしてメインはどうしよう。 「今日の魚料理はなんですか?」 「黒鯛のポワレです」 うむ、そうきたか。だが強敵の肉軍団、郷土料理攻勢が待ち構えている。今一番何が食べたいかと自問すれば鶏である。「仏産若鶏1/2羽丸ごとロースト」である。赤ワインを飲みながら鶏にかじりつきたいという衝動が抑えきれない。
だが「レストランに来て、自分が食べたいものを頼んではいけません。シェフが食べてもらいたいという無言のメッセージはメニューに書かれています。それを頼まなくてはいけません」。食の師匠から言われた言葉を長らく守ってきた自分としては、メニューで主張が強くない鶏は頼めない。
鳩や小鳩のローストで、キュイソンの具合を確かめるのもいい。しかしここはビストロ。郷土料理だろう。一人でやっているのにカスレもシュークルートもある。ああ、タブリエドサプール(ハチノスのカツレツ)にかじりつくのもいい。 いやトリップアラニソワーズ(ニース風牛胃の煮込)は、トマトのうまみにレモンコンフィが利いているかもと思えばこちらも捨てがたい。しかしここは自信作なのだろう、一番上に書いてあるアンドゥイエットにした。但し書きの「臭みというべき香りあり」という文言がいいじゃないか。