欲しいクルマのために仕事を頑張る!というアストン・マーティン・ヴァンテージのオーナーは、クーペ好きのCピラー・フェチでした!!
アストン・マーティンはCピラーがモノを言う!
「欲しいクルマの存在は仕事の原動力の一つ」と公言し、ピアース・ブロスナン時代の007をこよなく愛する水谷友春さんが、日々の相棒として最近手に入れたのは、マグネティックシルバーに彩られたアストン・マーティン・ヴァンテージだった。 【写真11枚】アストン・マーティン・ヴァンテージ、グローブボックスがないのでラゲッジにはグローブトロッターが! ◆クレイグよりもブロスナン 「ありきたりですが、アストンマーティンに乗っている人でジェームズ・ボンドを意識してない人はいないと思うんですよ。個人的にはピチピチのトム・フォードのスーツを着たダニエル・クレイグだとやり過ぎ。ピアース・ブロスナン時代のエレガントなボンドが好きで、時計や、ネクタイ、靴も彼の作品ごとに集めたりしています」 マグネティックシルバーに彩られた2019年型のアストン・マーティン・ヴァンテージから降り立った水谷友春さんはそう切り出した。 「クルマ好きも元を辿ると007の影響かもしれないですね。それもブロスナンの時代のボンドが好きなので、一番欲しいクルマは『ダイ・アナザー・デイ』に出てきたV12ヴァンキッシュ。実は本国のアストン・マーティンでセミATをMTに載せ替えるプログラムがあるんです。それが気になっているのですが、さすがにアストン・マーティン3台所有というのは酔狂過ぎますかね(笑)」 そう、水谷さんのアストン・マーティンは、ヴァンテージだけではない。なんとこの他に08年型のDB9、しかも珍しい6段MT仕様を所有しているのである! 「知り合いから“DB9のMTの売り物が出るよ”って言われて調べたら、生産台数が全世界で385台、正規輸入は日本にたった4台といわれる超レア車だったんです。乗ってみると意外と普通ですが、12気筒をMTで操るのは今となってはある種の特権だと思っています。詳しい人に“そんなクルマあったの?”って言われるような名門メーカーの異端児が好きなので、持っている満足感はあります(笑)」 この「人とはちょっと違う」というスタンスが、水谷さんとクルマとの付き合いを読み解く、もう一つのポイントである。 ◆いきなりアガリ 水谷さんが免許を取って最初に買ったのは大学生の時。S15型の日産シルビアを買い、自動車部に入っていた。 「私大の歯学部にいたのですが、勉強をサボって遊んでいたら留年してしまい、親にS15を取り上げられてしまった。でもクルマのない生活なんて考えられなくて、自分でクルマを手に入れるために、休学して不動産会社に勤務し、マンションやビルを売りました。またそこの社長が930ターボ・カブリオレを3台も持っていたポルシェ好きでして。師と仰いで働いていたので、頭金くらいの金額が溜まった時に僕も996ターボ・カブリオレを買いました。2012年のことです。21歳で買って今34歳なので、もう13年持っていることになります」 その後復学し、無事に歯科医師免許を取得した水谷さんだが、この経験が人生にも、その後のクルマ趣味にも大きな転機になったという。 「996ターボ・カブリオレもレアなモデルですが、手に入れてから、もっと良いクルマを買えるようになりたい! という思いが強くなりました。でも、どうしたら買えるのだろう? とクルマ好きの集まりに参加してみると、そういうクルマのオーナーは皆、ビジネスで成功している方ばかり。しかも“他の人がしていないこと”や“日本初”の取り組みをされている方が多かったんです。そこで自分自身もビジネスの方が性に合っていると感じていたので、歯科医として勤務せずに、M&Aの業界に入りました。そこで仕事をしていく中で、歯科医院にも後継者問題で困っているところが多いことに気づいたんです。ただ、M&Aのプロ側に歯科医師の事情が分かる人、歯科医師側にM&Aの事情を知る人がいない。ならば両方の事情を知る私がその助けになれればと思い、自分の会社を立ち上げました」 そこで有能なビジネス・エクスプレスとして、大いに活躍してくれたのも996だった。 「いきなりアガリのクルマを買っちゃったかな、という思いはあります。なぜなら、乗っていく場所やシチュエーションを選ばないし、短時間なら4人も乗れる。屋根も開くし、踏めばしっかり速い。確かに他のスーパーカーに憧れることもありますが、何か失うものもあると思うんですよ。例えば人が乗れないとか、毎日乗れないとか……。そういう意味でも911ってチャートにすると全部80点以上の綺麗な正五角形を描いている。クーペが好きと言いながら、心の中では911、それもターボ・カブリオレに敵うクルマはないと思っています(笑)」 ◆Cピラー・フェチ 一方でトラブルこそないものの、13万km以上を走破したこともあり、最近になって996に少し気になる部分が出始めてきた。 「良い物を長く使いたいタイプなのでスクラップ&ビルドのクルマは好きじゃない。996はこの先もずっと乗ると思うので、30万kmを目指して時間をかけてリフレッシュしようと決意しました」 そこで996に代わり、普段も乗るクルマとして今年購入したのがヴァンテージというわけだ。しかし数多あるクルマの中で、なぜ水谷さんはヴァンテージを選んだのだろうか? 「仕事柄、平日はスーツを着て乗ることが多いのですが、スーツを着て違和感のないスポーツカーって案外少ないと思うんです。ミッドシップよりもFR、フェラーリ、マクラーレンよりも、ポルシェかアストンみたいな。その中でもヴァンテージは派手すぎずアンダーステイトメントなところが良い。また乗ってみると、GTライクなDB9と違って、ヴァンテージはやはりスポーツカーなんだと感じます。シャシー剛性も高く、足回りもソリッドで楽しい。確かにDB9の方が味わい深いけど、ヴァンテージの方が信頼性が高い。実際普通に乗れますしね」 またヴァンテージに乗るようになって、改めてクーペの魅力にも気づくようになった。 「どうしても996は軋み音とか風切り音とかを感じるんですよ。その点、クーペの方が包まれている安心感があります。同じヴァンテージでもロードスターじゃなくクーペですね。というのもCピラーの美しさはクーペの特権だと思うんです。ウインドウモールの後端からCピラーにかけての緊張感が好き。クーペよりオープンがかっこいいクルマはないと思っています。そういう意味ではCピラー・フェチですね」 ……しかし話はここで終わらない。実は今、V12ヴァンキッシュ以外にもすごく気になっているクルマがあると水谷さんは告白する。 「先日、BMW Z8の売り物を見てきたばかりなんです。やはりブロスナン世代のボンド好きとしては外せないですからね。そもそも996を買う時にも迷ったのですが、MTの2シーター1台では厳しいと諦めた。以来、ずーっとZ8が値上がりするのを横目で見ながら悔しい思いをしてきたんです。でも自分の力で相場は変えられない。だから仕事を頑張るしかない、というのが今の原動力になっている気もします。もしここでZ8も加わるとなったら、クーペ好き、ボンド好きというより、デザイナーのイアン・カラム、ヘンリック・フィスカーが好きということになるかもしれませんね(笑)」 文=藤原よしお 写真=望月浩彦 (ENGINE2024年6月号)
ENGINE編集部
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