ついに発表された新たな『バーチャファイター』の姿とは? セガ・龍が如くスタジオ代表の横山氏とプロデューサーの山田氏に聞く
2024年12月13日(日本時間)に開催された“The Game Awards 2024”。そこで公開された映像にて、セガの龍が如くスタジオが、まったく新たな『バーチャファイター』(以下、VF)シリーズ作品を制作していることが明らかになった。また、そのあとを追うように公開された配信番組“VF Direct 2024”では、新『VF』のみならず、『Virtua Fighter esports』(以下VF esports)のアップデートや、Steam版の『Virtua Fighter 5 R.E.V.O.』(以下VF5 R.E.V.O.)による公式世界大会の実施決定など、さまざまな情報が一気に公開されている。 【記事の画像(16枚)を見る】 そこでファミ通ドットコムでは、10数年振りに大きな動きを見せることになった『VF』シリーズについて、プロジェクトの中心人物である龍が如くスタジオのふたりに直撃取材。どのような経緯でこのプロジェクトが立ち上がったのかを皮切りに、『VF』ファンの皆さんが気になるであろうことを、現時点で語れる限界まで語っていただいた。 横山昌義 氏(よこやま まさよし): セガ 執行役員/第1事業部長/龍が如くスタジオ代表。『龍が如く』シリーズ制作総指揮。1999年にセガに入社し『ジェット セット ラジオ』などを手掛けた後、『龍が如く』で脚本・演出などを担当。以降も、『龍が如く』シリーズのコアスタッフとして全作品に携わる。2021年に現職である龍が如くスタジオの代表に就任。文中は横山。 山田理一郎 氏(やまだ りいちろう): New バーチャファイタープロジェクト プロデューサー。コンシューマーでさまざまなタイトルに携わり、『Jリーグ プロサッカークラブをつくろう!6』で初プロデュースを担当。その後、スマートフォン向けタイトルに活躍の場を移し、『D×2 真・女神転生リベレーション』を筆頭に、多くの運営型タイトルをプロデュースしている。文中は山田。 “New バーチャファイタープロジェクト”は、どのように動き始めたのか ――“The Game Awards 2024”で、まさかの発表となった“New バーチャファイタープロジェクト”ですが、なぜいま、このタイミングでの新作発表だったのでしょう? まずは、この新『VF』が立ち上がるまでの経緯を教えていただけますか。: 横山: もともと『VF』シリーズの開発チーム自体は、私の管轄である第1事業部に存続していて、最近では彼らが『VF esports』などを手掛けていました。さらにそれと並行して、基礎研究による技術的な積み上げを続けつつ、新たな続編の企画を何度も検討したのですが、“いまのゲームファンの皆さんに納得していただける企画”がなかなかできなかった……というのが実情です。今回の発表にいたるまでに、本当にいろいろありました。 画像は“『New VIRTUA FIGHTER』Project ティザートレーラー”からのキャプチャー。 山田: 『VF』というのはセガの歴史を彩るトップIP(知的財産)のひとつですし「何とかしたい」という気持ちは多くの社員が持っていました。ただ、横山が言ったとおり、いろいろな事情で『VF5』からかなりの時間が空いてしまいましたし、「いまのマーケットに対してどんなものが適切なのか」という部分を構築するのに、すごく時間がかかってしまったのです。 ただ、先にも言ったとおり、同じスタジオ内にはVFシリーズの開発者たちがいて、また多くの『VF』ファンもいます。彼らは新しい『VF』を作りたいとずっと思っていました。そんななかで私が本作を担当することになって、改めて内部にいる彼らの『VF』に対する熱意を聞き、そしてこれからの『VF』に必要なことを考え、過去と未来のふたつをつなげられるような企画を練り上げた結果、ついに社内的なGOサインが出た、という流れですね。「大きなプロジェクトになるからがんばってくれ」と。 ――自分も含め、新たな『VF』への期待はファンの総意でもあると思います。 横山: セガという会社は会長、社長、そして先代の社長まで含めて、全員がいろいろな視点からの“VFファン”なんです。先代社長の杉野(杉野行雄氏。現・セガ代表取締役 副社長執行役員Co-COO/セガ フェイブ 代表取締役 社長執行役員)は、もともとアミューズメント、AM畑の人なので、AM側の視点から『VF』に思い入れがあります。会長の里見(里見治紀氏。セガサミーホールディングス代表取締役社長 グループCEO/セガ代表取締役会長 CEO)は、『VF』を含めたセガのIPをとても愛していて、“セガのIPの価値を再定義して、世界に伝える”ということをやってきています。近年の『ソニック』タイトルや映画化などがその好例ですね。 ――たしかに『ソニック』シリーズは、IPとして再び盛り上がりを見せてきています。 横山: そして、社長の内海(内海州史氏。セガ 代表取締役 社長執行役員 COO)は、セガを“トレジャーアイランド”だと言っています。「セガの持つIPならば世界に打って出られるはずだ」という考えのもと、 “レガシープロジェクト”を推し進め、『ゴールデンアックス』や『Shinobi』なども再生しようとしている。こういった面々が『VF』のことをずっと気にかけていましたし、「いつどのような形であれば『VF』の新作を出せるのか?」という議論をずっと続けていたのです。 ――水面下では新作の検討が続いていたと。: 横山: そして山田が言ったように、開発内部でも同じように『VF』のことを考えていた人は多かったわけですが、正統進化を望む人もいれば、まったく新しい形での『VF』というIPの復活を考えている人もいて、それぞれの見ている方向が違いました。その状態で、私にプロジェクトが託される形になったのです。 ――なるほど。そうだったのですね。 横山: そうやって『VF』をリプロジェクトするにあたり、“単純に格闘ゲームとしての延長線上にあるものを作る”だけでは、世界を相手に勝負するのは難しいと思いました。『VF』が築き上げてきたイノベーションの歴史を紐解き、かつそこに“少し先の未来”を入れた企画を作れる、真の“企画屋”が必要でした。 その企画屋として真っ先に頭に浮かんだのが、この山田だったというわけです。セガの企画職の同期であり、彼のヒストリーと能力をもっともわかっていたので、一度セガを離れた彼を呼び戻した初日に、いきなり「『VF』をやってくれ」と頼みました。 RTS(リアルタイムストラテジー)やSLG(シミュレーションゲーム)のプランナーとして活躍し、かついまもセガでサービスが続くソーシャルゲームをいくつも立ち上げ、運営もしてきた実績。ゲームデザインからプロデュースまでゲームビジネスをあまねく経験してきている彼にしか、このリプロジェクトは担当できないと考えたのです。 山田: 入社までまったく聞いていなかった話ですし、最初は 「無理だろう!」:と思いましたけどね(笑)。そもそも私も横山も、家庭用ゲーム機向け、コンシューマー畑の人間ですから。 ――山田さんには、ものすごいプレッシャーがかかりそうな流れですね……。 横山: でしょうね(笑)。でもその話をした後、怒濤の3ヵ月でプロジェクトが立ち上がりました。 ――そのプロジェクトの立ち上げにあたり、まず目指したことはなんでしょうか。 山田: いま対戦格闘ゲームが再び盛り上がりを見せていますが、急にそうなったわけではなく、当然ながらこの10数年に『鉄拳』シリーズも『ストリートファイター』シリーズも積み重ねたものがあるわけです。そんななか、「同じベクトルで勝負を挑んで、追いつけるのか?」という疑問がありました。 とはいえ、『VF』はやはり対戦格闘ゲームというベースがあってのシリーズです。そのうえで、その延長線上にあるものを超える企画を考えた結果、まずは「対戦格闘ゲームという枠だけに収まらず、多くの人に遊んでもらえるものを目指す」ということを目標に据えて、プロジェクトを立ち上げました。 ――『鉄拳』や『ストリートファイター』シリーズの最新作が人気を博しているなか、『VF』を出すということは、企画として「勝算がある」と踏んでのことなのでしょうか。: 横山: どのように勝算を見出すかについて具体的なことはまだ言えないのですが、社長の内海にはこんな話をされました。 「真冬に食べログで4.8がついている居酒屋に行くとしよう。ただ、そこはたった8席しか座れない店。しかも満席。そんな店にあなた並びますか?」と。どんなにおいしいとわかっていても、いつ先客が帰るかわからない居酒屋の外で並んでは待てません。当然私は「待てません」と答えます。 「どんなに混んでいてもフードコートなら並べるよね? 席が空くのがわかっているから。でもいつ空くかわからない店には並べない。なら自身が並ぶ店を変えるか、店ごと変えるしかないよね。それをしてください」と。 ――なかなかの難問ですね(笑)。 横山: 私自身もこういうたとえ話はよくしますし、なるほどと思いました。そもそも『龍が如く』も発想としては同じなんですよね。ストーリー重視のアクションアドベンチャーという“店”としてのジャンルは変えずに、夜の街や裏社会といったカルチャーを付け足すことで、普通の居酒屋から違う趣の、大人の集まる店に姿を変えた。 では今回のミッションではどうするべきなのか? 一度俯瞰して『VF』を見てみるとひとつの特徴が見えてきます。私が『VF』を先入観なく観た印象は、“地味でストイックなバトル映像”です。対戦格闘ゲームとしての素地は申し分ないけれど、あまりに質実剛健。飛び道具もないですし。ある意味エフェクトバリバリの『龍が如く』よりもバトルは絵的に地味。 ただ裏を返すと、それが武器になると思いました。超人的なアクションはあるものの、あくまで生身の人間が殴り合っている絵は、リアルなスト―リーと合わせるにはちょうどよかったりもします。つまり『VF』が30年もの間、こだわり続けてきたリアリティーは、リアルな街並みやリアルな世界設定でこそより輝くのかもしれない。 画像は“『New VIRTUA FIGHTER』Project ティザートレーラー”からのキャプチャー。 ――おお、ちょっとワクワクする話ですね。: 横山: 桐生一馬が波動拳を撃ったら、もはやそれはリアルではなくてファンタジーですけれど、鉄山靠ならリアルなドラマを描ける。:ですから龍が如くスタジオにとって、『VF』は食い合わせのいいコンテンツだな、と。 ――たしかにそうかもしれません。 横山: 龍が如くスタジオが開発する以上、ライバルの対戦格闘ゲームになく、我々だけが積み上げてきた強みというのは間違いなくあると考えています。それはドラマ性であったり、演出だったり、街ごと作る能力だったり……。そういったものを『VF』に融合させて、新しい居酒屋を作っていこうというのが、私なりの解答ですね。ですから山田には「居酒屋を守ったまま、どうやって新しい業態を作るか」を考えてもらおうと思ったのです。 山田: とても難しいオファーでした。それをやり遂げるにはアクションアドベンチャーと対戦格闘ゲームの両方にリスペクトと深い理解がないといけません。だからまずは最初に『VF』を生みだした鈴木裕さんの記事やインタビューを片っ端から読み直すことから始めて、新たな『VF』の核となる部分を見つけ出だすことに時間を費やしました。そして自分自身の“核”が見つかったことで、本格的に企画を立ち上げることができたわけです。 新しい『VF』の“核”になるものとは? ――そこで見つけられた“核”とはどんなものだったのでしょうか?: 山田: 私は世代的に『VF』シリーズが起こしたムーブメントを目の当たりにしてきた人間ですが、そこで自分が感じたことや、歴代タイトルを研究して紐解いていった結果、シリーズを通じて守ってきた“核”とは、“イノベーティブ(革新的)であること”だと考えました。そして、この言葉に縛られていたからこそ、なかなかナンバリングの続編が出せなかったとも言えます。 ――ああ、たしかに。 山田: 言葉で言うのは簡単ですが、イノベーティブであることって難しいのです。「ゲームセンターの筐体に最新の基板が入っていて、これでしか遊べない!」といった時代なら、もっとシンプルだったでしょう。その基板自体、まさに“未来が詰め込まれたもの”でしたし、当時で言えば映画監督のスティーヴン・スピルバーグが『VF3』を見て「このグラフィックで、こんなクロスシミュレーションができるのはすごい!」と絶賛したくらいですから。ところが、アーケードゲームと家庭用ゲーム機との性能差がなくなってきてからは、なかなか難しくなりました。 ――そうですね。1990年代のアーケードゲームは本当に最先端の技術が詰まっていました。 山田: ただ難しくはあるものの、新『VF』がイノベーティブであることは、非常に重要な価値だと考えています。また、先ほど横山も言っていましたが、リアリティーというキーワードも重要だと思っています。 リアリティーにもいろいろな考えかたがありますが、最初の『VF』が世に出たときはカンフー映画の人気が継続していた時代でした。カンフー的な動きとリアリティーが『VF』の核になっていたからこそ、飛び道具的な技がないゲームになっていったわけです。 ――当時遊んでいた立場からしても、リアリティーはほかの対戦格闘ゲームと一線を画していました。 山田: そうなんです。キャラクターの見た目も、当時の限られた技術の中でリアルに迫ったスタイリッシュさがありました。ですから新『VF』についても、ゲームの根幹としては“イノベーティブであること”と、“リアリティーがあること”、このふたつこそが核になると思っています。もちろんゲーム性で言えば、間合いを詰めて近接戦で戦う緊迫感や、戦いにおける読み合いもほかとの作品との違いですが、もっとコンセプト的な部分でのふたつの核をどう取り入れていくかをじっくり考えました。 ――なるほど。いまのお話にも出ましたが、『VF』は対戦格闘ゲームでありながらモニター越しの読み合い……言い換えれば対戦相手とのコミュニケーションをとるゲームだったような気がしますし、同じ時代のほかの作品よりも、その濃度が濃かった印象です。: 山田: そうですね。そのおかげか、ゲーム外でのバトルもたくさんありましたけどね(苦笑)。プレイヤーの層が広かったのも一因かと思いますが。 横山: ゲームの中のことなのに、「殴られて痛いしムカつく」と思えるようなリアリティーがあったことが大きいと思います。ある意味、ケンカの代理ができたゲームというか。 ――あああ、それはあるかもしれませんね。“うまいヤツがカッコいい”的な文化になったのも、リアリティーがあったからこそでしょうし。 横山: そこまで感情移入させられるツールとして、『VF』が機能しているって、本当にすごいことなんです。それは『龍が如く』で目指した部分でもあります。もちろん実際にやっていることは違いますが、「没入感や臨場感をもって、いかにゲームに感情移入してもらえるか」という部分は、『VF』も『龍が如く』も共通しています。 ――歴史を辿れば、セガが開発したアーケードの体感ゲームなども、没入感や臨場感を増して、感情移入させるためのものでした。 横山: 今回のプロジェクトを立ち上げて改めて感じましたが、セガでいまでも残っているタイトルの根底には通じるものがあって、それは「(プレイヤーにとって)いかに自分ごとにしてもらうか」を愚直に考えることです。それこそがセガの作り手に受け継がれるカルチャーなのかもしれないな、と思ったりしています。反面、それがとっつきの悪さにもつながっていたりするのですが……。 ちなみに、よく「『シェンムー』と『龍が如く』は似ている」と言われるのですが、作品どうしにまったく関わりはないですし、作っている人間も違います。でも精神性は自然と似てしまうのかもしれません。 ――遺伝子は同じように感じます。 横山: キャラクターデザインもそうですね。作り手が変わっても世代が変わっても、なぜかセガの主人公って前髪を上げるので、少し似てしまうんです。結城晶、芭月涼、そして桐生一馬と(笑)。 ――たしかに(笑)。 横山: セガ的な硬派な男のイメージなんですかね? これはそろそろ変えたほうがいいところだと思います(笑)。 ――少しお話を戻しますが、新『VF』でも、没入感や臨場感は大事にしているわけですね。 山田: ええ。それはリアリティーとともに重要な要素だと考えています。 画像は“『New VIRTUA FIGHTER』Project ティザートレーラー”からのキャプチャー。 新『VF』で行う改革とは? ――ある意味、『VF』はもっとも格闘技に近い対戦格闘ゲームだと思います。だからこそ、読み合いや駆け引き、シビアな入力など、上級者になるほどプレイヤーの能力が求められる部分があると思うのですが……。: 山田: 私は根本的な部分では 「『VF』は難しいゲームではない」と思っています。:『VF』はプレイヤーの研究によってテクニックが研ぎ澄まされているので「操作がシビアだ」と思われがちですが、基本的にレバーと3~4つのボタンで操作するものですし、ほかの対戦格闘ゲームに比べると、ベースの操作自体はそこまで複雑ではありません。それに、最終的に1フレーム単位のシビアなやり取りをすることになるのは、どの対戦格闘ゲームでも同じですから。 ――たしかに、対戦格闘ゲームの終着点は、どの作品もシビアな操作が要求されます。 山田: ただ、基本的な戦いかたにいたるまでのステップがわかりにくいのは、問題点のひとつだと思います。「必殺技的なものがないので、まず何をしていいかわからない」といったプレイヤーは少なくないと思うので。突き詰めていく過程のハードルは下げたいですね。 ――なるほど。ほかにも、いまの時代に合わせて「変えなければならないな」と思っているポイントがあれば教えてください。 山田: いろいろとありますが……少なくとも「難しそう」と思われている部分は絶対になんとかしたいです。これまでの歴史もあって、ハードルが高いゲームであるように思われてしまっているので。 ――それは、いまだに対戦格闘ゲーム全般で言えることかもしれないですね。 山田: あと、『VF』シリーズのもっとも弱い点として挙げられるのが、キャラクター性だと思っています。「彼らがなぜ戦っているのか」という部分が、ゲームの中でほとんど語られていない。ほかの対戦格闘ゲームは、キャラクターのバックボーンがなんらかの形で描かれていますからね。 ――ある意味、戦うこと自体の魅力だけで牽引してきた感があります。 山田: 『VF』はアーケードゲームがメインでしたから、そういう形になった面もあると思いますが、そこは必ず手を入れなければならないな、と思っています。そして、それをプレイヤーの皆さんに伝える努力ですね。物語であったり、たとえばストーリーモードのおもしろさのようなものであったり。 ――なるほど。ということはストーリーモード的なものが入る可能性が? 山田: そうですね。そういった要素は考えています。 横山: ちなみに、そういったストーリーと『VF』の関係について、私はK-1に近いかなと思っているんです。 ――と言うと? 横山: K-1は、もともと空手団体である正道会館の石井館長が始めたイベントです。K-1ファイターたちの使っている技は、空手やキックボクシングなど、昔からあるもので、新しいものではありません。試合もプロレスの興行とはちょっと違って、派手さのない、地味なファイトなわけです。でもファイターたちが出場するまでの過程や物語などを付加することで、一大エンタテインメントになりました。 ファンはもちろん試合を楽しみにしているわけですが、それは“背景にあるストーリーも込み”なんです。でなければ、それまで縁もゆかりもなかったオランダ人のアーネスト・ホーストについて、多くの人が詳しくなって「何連覇するのかな?」なんて話になるわけがない(笑)。 ――たしかに。: 横山: ですから、波動拳やド派手な必殺技のある格闘ゲームがプロレス的なエンタテインメント性があるものだとするならば、『VF』が目指すべきエンタテインメント性というのはK-1のそれに近いのではないかと。 ――なるほど。それがK-1に近いという言葉の真意なのですね。 横山: それはルールを変えるとか、画面を派手にするといったものではありません。地味でガチの試合はそのままに、その魅力をより増幅させるということです。私の目線でやらなければならないのは、そこだと思いました。 ――ひとつの興業としておもしろくすると。 横山: あくまでたとえ話ですが、そういうことです。ですから私の役割が新『VF』を興行としておもしろくすることだとしたら、山田は新『VF』そのもののおもしろさを追究する役割ですね。技とか、試合のルールといった部分です。 山田: そう、ゲーム的な部分ですね。 横山: さらにこのプロジェクトは『VF』の過去と未来を繋ぐ懸け橋としても機能しなければなりません。ゲームを世界中の人が楽しめる形に落とし込むとともに、いままで『VF』を愛してくれていた人と、これから『VF』を愛してくれる人を、どう融合させていくかについて、長い時間をかけて真正面から取り組んでもらうつもりです。 山田: 発表直前までは何もなかった状態ですが、そこからプレイヤーコミュニティーを作り上げていくところまでやっていきます。10数年の時を埋める作業はたいへんですが……。 ――それも大きな変革のひとつですね。少し話を戻しますが、ストーリーモード的なものがあるということは、新『VF』はPC含む家庭用ゲームであるという認識でよろしいのでしょうか? 山田: はい。家庭用での展開を考えていますし、キャラクターや物語面などは、アーケードゲーム作品であった過去作とは違ったものになると思っていただければ。そして、その体験は『龍が如く』シリーズとも異なり、もっとイノベーティブなものにしていくつもりです。もちろん、龍が如くスタジオが培ってきたドラマ性や技術を使っての革新となりますが。 ――それが「対戦格闘の枠に収まらない」という部分につながるわけですね。 山田: そうですね。ゲームボリューム的には間違いなく大きいものになりますし、その中に『VF』本来の対戦格闘というコンテンツが含まれている、というイメージです。 ――率直な疑問なのですが、新『VF』のアーケード版というものは、ないのでしょうか? 山田: いまのところ考えていません。いまのアーケード基板で同じようなクオリティーのものを動かそうとするだけでも、かなりハードルが高くなってしまいますから。 ――となると、通信環境などが対戦に及ぼす影響も考えなければならないので、たいへんそうです。 山田: それに関しては、昔とは違って技術もかなり進んでいますから。家で遊んでも、昔ゲームセンターで遊んでいたときと変わらないような体験ができるものになると思っています。 ――ちなみに開発側の視点から見て、日本の若いゲームファンや海外のゲームファンに、『VF』というシリーズがどう認識されていると感じていますか? 山田: 私の持っていた感覚よりは、海外での認知度はありました。ただ、遊んだことがある方はやはり少なくて、「スゴかったゲームなんだよね?」という感じですね。そして日本においては、かつて大ヒットしたゲームではあるものの、やはり若い人の認知度は低いです。 横山: ですので現役プレイヤーのコミュニティを大事にしつつも、「ゼロから始めるつもりでやってほしい」という話は常々しています。私の周りにも『VF』がすごく好きという方が何人もいるのですが、その人たちに「いまの『VF』を知っていますか?」と聞くと、ほとんどの人が知らない。『VF』は知っている。でもやらない。なぜやらないのか? その答えのひとつとして、いまの若い世代が遊んでないからというのがあると思っています。 いま話題のもの、いま若い世代が遊んでいるものって、やっぱり年齢に限らずみんな目にしますし、何かしらの形で触れるんですよね。ですからまず若い世代に刺さるものでなければならない。そしてかつて『VF』を遊んでいた世代も心躍るようなタイトルでなければならない。どちらか一方でもダメ。 ――個人的にも、そうであってほしいです! 横山: 正直なところ、往年のファンが新『VF』を実際に遊んでくれるかというと、年齢や環境も考えるときびしいところもあるかとは思います。ただ、若い人との共通の話題として『VF』の話をしてほしい。若い子がのめり込むことができ、幅広い世代の人を新『VF』がつなぐ……それが私の目標のひとつです。ただ若い子に遊んでほしいだけなら、『VF』という名前を使う必要すらないですから。 山田: そうなれば親子で『VF』の会話ができますからね。ヒット作にするために、それは必須のことだと思うんです。 横山: じつは遊び手だけでなく、作り手にも同じことが言えます。いまのセガで言えば、『VF』を現役で開発していたスタッフがいて、遊んでいた世代がいて、ぜんぜん知らない若いスタッフもいる。そんなカルチャーのギャップがあっても、同時に語れるものを作っていくというのは、作り手としてもいいことだな、と実感しています。 山田: 開発をしているなかで、若いスタッフに感触を聞くことがあるのですが……カッコよさやおもしろさはけっこう共通だったりして、安心することも多いですね。くり返しになりますが、いまメインでゲームをプレイする世代に「僕たちには関係ないや」と思われたくない。初めて遊ぶ人に向けて、ゼロから新『VF』を作っているということは知ってほしいですね。 横山: そのうえで、『VF』の過去を知っている人とこれから知る人の感覚を埋めるようなコミュニティを構築していこうと思っています。 ――ただ、対戦格闘ですから、昔からやり込んでいた熟練者にビギナーがボコボコにされてガッカリ……なんてことも起こり得たりしそうです。 山田: やっぱり負けると悔しいですし、初心者からしたら、それはイヤじゃないですか。そこをフォローできるかどうかは家庭用ゲームを作るにあたっての重要なポイントになると思っていて、いろいろな人に楽しんでもらうための工夫はしっかりしていきたいと思っています。その工夫に関しては、龍が如くスタジオで培っているものがひとつの武器になると思っています。 龍が如くスタジオで新『VF』を作ることの強み ――言える範囲で構わないのですが、先ほどお話のあったドラマ性以外に、“龍が如くスタジオならではの部分”がどう活かされるのか、うかがってもいいですか?: 山田: やっぱり、いちばん大きいのは街づくりや背景制作ですね。 “そこに確固たる世界が存在している”という世界の構築に長けているスタジオですから。 画像は“『New VIRTUA FIGHTER』Project ティザートレーラー”からのキャプチャー。 横山: 文化や生活を描くことに特化しているスタジオなので、広義での背景を作ることで、キャラクターの臨場感が出てくると思います。しかも、それを圧倒的なスピードとクオリティーでやる(笑)。 山田: ティザー映像の完成も、ちょっと考えられないくらい早かったです(笑)。 ――そんなにですか!? 山田: 先ほど横山が3ヵ月でプロジェクトを立ち上げた話をしましたが、どんな企画を書いてもビジュアルがなければ説得力に欠けるわけです。ですので、龍が如くスタジオのスタッフに「こんな映像を作りたいんですが……」と言ったら、たった1ヵ月でとんでもない“街”が仕上がってきました。そのクオリティーとスピード感は、これからプロジェクトを進めるうえでの自信になりましたし、企画している自分でも映像を観て「遊んでみたい!」と思えるものでしたね。 横山: 今回、新『VF』と同時に『PJ Century』(プロジェクト・センチュリー)の映像も発表しましたが、この2本で、我々が得意としているものを存分に観ていただけると思います。『PJ Century』に関しては絵柄がぜんぜん違いますが、リアリティーを突き詰めるという方向性に変わりはありません。 山田: 開発スタッフもワクワクしていると思いますよ。大きいプロジェクトがそれぞれ進行していて、どちらも違うカッコよさを持つIPなので。 横山: ちなみに、新『VF』と『PJ Century』は別々のゲームエンジンで制作しています。同一のスタジオにも関わらず、異なるエンジンでリアリティーの方向性が違う2本のIPを並行して作れるというのは、世界を見渡しても珍しいと思います。 ――規模とスピード感が破天荒ですよね(笑)。 横山: まあそう感じてもらえるように計画しているんですけどね(笑)。素直に発表するなら『龍が如く8外伝 Pirates in Hawaii』の発売後でもよかったのですが、発売前のほうが超たくさん作っているように感じてもらえますし、「RGGスタジオはどうなってんだ?」と、いろいろ注目してもらえるかなという思いもありましたので。まあ実際、超たくさん作ってはいるんですけどね(笑)。 ――『PJ Century』の映像を拝見しましたが、1915年が舞台なこと以外は、内容についてまだまだ不明なところが多いように感じます。続報はいつくらいになりますでしょうか? 横山: ノーコメントで(笑)まずは新『VF』や、2025年2月に発売される『龍が如く8外伝 Pirates in Hawaii』にご期待いただければと思います。 画像は“Project Century World Premiere Trailer”からのキャプチャー。 新『VF』の気になるポイントを直撃! ――ここからは、新『VF』の細かい要素について、可能な範囲でおうかがいします。まず操作についてですが、従来のレバー+3(or4)ボタン操作は、新『VF』ではどうなるのでしょうか?: 山田: 操作に関して大事にしなければならないと思っているのは、“簡単な操作にする”ということです。これは、初代『VF』がレバー+3ボタンで、過剰に複雑な操作が必要なかった、という原点にも通じるところです。ただ現段階では、必ずしもパンチ、キック、ガードの3ボタンでなければならない理由はないと思っています。優先すべきは、誰でも簡単に遊べる、というところですから。とはいえ、これまでの『VF』をやり込んでいるファンもいらっしゃいますから、そういった方のことも踏まえた操作にはしたいと思っています。 ――家庭用であることを考えると、大多数の人がスティックではなくパッドで遊ぶ可能性もありますよね。 山田: そうですね。パッドで遊ぶことに対しての最適化も行わなければなりません。最終的にはプレイヤーが好みの操作系で遊べる、という形になっていくのではないかと思います。 ――これまでの『VF』は、あくまで基本的にですが、リングアウトがあるバトルになっていました。新『VF』でも、リングアウトの概念はあるのでしょうか? 山田: 個人的にリングアウトが好きなので、リングアウトがなくなるということはないと思います。リングアウトのあるステージもあれば、ないステージもあり、特定条件でリングアウトになるステージもある……というイメージで考えています。ただ、シチュエーションのあるバトルの場合は、ちょっと違うケースになるかもしれないですね。なので、ティザームービーは、それを踏まえた映像になっています。 ――もしかすると、1対1ではないバトルも? 山田: そのあたりはご想像にお任せします。 ――ティザームービーの映像の舞台は、日本ではなさそうでしたが……? 山田: はい。日本ではない、とある場所ですね。 ――新『VF』にはドラマ性があるようですが、世界設定は過去作品と地続きになっているのでしょうか? またその場合、前作からどのくらいの年月が経過しているのかも気になります。 山田: 従来の設定を継承することは大事だと思っていますので、過去作品と新『VF』の設定は地続きになっています。また、新『VF』を遊んでいただくことで、過去作品の設定だけではわからなかった部分が明らかになるようにする予定です。なお、時代設定はまだ秘密とさせてください。 ――ティザー映像では、八極拳を使うアキラ(結城晶)らしきキャラクターと、サラに似たキャラクターが戦っていましたが……。 山田: 男性はアキラで、あれが新デザインになっています。なお、いっしょにいた女性はサラではなく、ステラというキャラクターなのですが、詳細はまだお伝えできません。ただ、このあたりに関しても、シリーズのファンと初見の方、それぞれが楽しめるような作りにしますし、プレイすれば自然に「ああ、そういうことね」とわかるようにしますので、ご安心ください。 画像は“VF Direct 2024”からのキャプチャー。 ――旧キャラクターも存在するし、新キャラクターも存在する、という感じになりそうですね。ラウやシュンなど、すでに老齢だったキャラクターは心配ですが……。: 山田: キャラクターは新旧混在することになりそうです。ラウやシュンは……どうなるでしょうね? それも楽しみにしていただければと思います。 ――ちなみに、シーズンパスのようなものでのキャラクター追加も考えていらっしゃるのでしょうか? 山田: シーズンパスの有無も含め、詳細はまったく決まっていないですが、新しい形のゲームを作ろうとしているので……シーズンパスというものに対する考えかたも、ほかの対戦格闘ゲームとまったく違うことすらありえると思っています。ただ、初心者のプレイヤーの方々にとってはエンドコンテンツとなるであろう対戦部分を“おもしろく作る”ことを最重視して進めていく、ということはいまからお約束します。 ――ズバリ、新『VF』に関しては、いつごろのリリースになるのでしょう? 山田: それについては現段階ではまったく言えないですね(笑)。 ――そうだと思いましたが、念のためうかがってみました(笑)。 山田: 先ほども述べたように、新『VF』は単なる続編を作っているわけではないので、開発のハードルが高いものになっています。どうしてもスクラップ&ビルドのくり返しになりますし、先ほど話題に挙がった「操作系をどうするのか?」といった部分ですら、1ヵ月では決まらないでしょう。そういった要素が山ほどある状態なんです。 とはいえ、移り変わりの早い世の中ですから、何年も作り続ける……ということはしないつもりです。クオリティーと両立できる範囲でなるべく早く出したいとは思っています。なお、龍が如くスタジオではいろいろなタイトルが並行して進んでいますが、片手間ではなく、フルパワーで新『VF』を作っていますのでご期待ください! “Legacy バーチャファイタープロジェクト”を並行して行う意図 ――新『VF』とともに発表された、“Legacy バーチャファイタープロジェクト”ですが、新作と並行してこのプロジェクトを立ち上げた理由を教えてください。: 山田: 新『VF』はより広い層に向けたタイトルですが、その発売までコアなファンの方たちに熱量を持ってプレイしてもらえるようにと立ち上げたのが、“Legacy バーチャファイタープロジェクト”になります。こちらは青木(青木盛治氏。『Virtua Fighter esports』、『Virtua Fighter 5 Ultimate Showdown』チーフプロデューサー)が進行しています。これまでの『VF』については、すでに『VF esports』のリリースから3年が経過していますが、大会を含めてやり残したことがたくさんあると思っているんですよ。 ――『VF esports』のVer.2.0もそれを踏まえた調整なのですね。 山田: ええ。あと、これは個人的な想いなのですが、『VF』というタイトルは“鉄人”を筆頭にした、スタープレイヤーたちがいたことで輝いたタイトルだと思うんです。そういうスタープレイヤーが、人気配信者になるぐらいにしたいなと。 そのためにも、もう一度スタープレイヤーにスポットライトが当たる場を用意したいという気持ちがありました。じつはオフィシャルの『VF』世界大会は、まだ開催されていないのです。 ――言われてみれば、これまで公式ではなかったですね。 山田: ですから『VF』が復活するタイミングで「誰が『VF』の世界一なのかを決める」ことにセガとしてしっかり取り組みたいと考え、“Virtua Fighter Open Championship”を実施することにしました。『VF5 R.E.V.O.』を開発したのもそのためです。こちらのリリースはSteam版のみとなっていますが、これはPCがもっともソリッドな環境で対戦でき、ロールバックネットコード(※)にも対応できるというのが理由です。 ※ロールバックネットコード:対戦格闘ゲームなどにおいて、先読みでグラフィックを描画することで遅延を感じにくくさせる方法。 ――大会がどういう結果になるか気になります。: 山田: まさかと思うような国の方が優勝する可能性もありますし、往年のスタープレイヤーが優勝するかもしれない。いちファンとして、私自身も楽しみです。 ――この世界大会は、いずれ新『VF』でも行う予定はありますか? 山田: それは、プレイヤーのみなさんの反応しだいだと思います。対戦がおもしろいゲームにするのは大前提なので、盛り上がっていただけるようなら、世界大会の実施というのは十分ありえるでしょう。ただ仮にやることになったとしても、過去大会のレギュレーションをそのまま引き継ぐのではなく、『VF5 R.E.V.O.』は『VF5 R.E.V.O.』の大会、新『VF』は新『VF』の大会をやる……という形でもよいかと思っています。 ――グローバル公式Discordについても発表されましたが、こちらはどのような運営を想定されているのでしょうか? 山田: 日本と英語の2言語でサーバーを立てる予定なのですが、最初はシンプルに、ファンの皆さんがコミュニケーションを取れるような場になってくれればいいと思っています。さらに公式のものなので、コミュニティマネージャーもこちらで用意しますし、我々からもその場でしか聞けない情報や大会情報なども発信していくことを考えています。また、皆さんから意見をいただくことも当然あるかと思います。たとえば、『VF5 R.E.V.O.』をリリースした後に、ゲームバランスについて意見をうかがう……といったケースもあるかもしれません。 ――コミュニケーションの場としても使えるし、フォーラム的な形でプレイヤーの声を吸い上げる機能も持っているというイメージでしょうか。 山田: そうですね。一方向だけではないものにしたいと思っています。新しい挑戦として、いろいろなことを試しながらやっていきたいので、暖かく見守っていただければ幸いです。 ――オンラインRPGなどは別として、対戦格闘でフォーラムがあるタイトルというのは、なかなか珍しいですね。 山田: もともと運営型のタイトルを手掛けていた経験もあり、プレイヤーの皆さんの声を聞くということは大事だと思っているんです。また、『VF』はずっと休眠していたタイトルでもあるので、改めて信頼関係を構築することが必要だとも思っています。龍が如くスタジオが『VF』を手掛けることに対して不安感を持つ方もいらっしゃるでしょう。そういった方々に安心していただくためにも、グローバル公式Discordが必要だと判断しました。 ――グローバル公式Discordがあることで、よりコミュニティが盛り上がりやすくなるとは思います。 山田: そうだとうれしいですね。最初はコアなファンの方に牽引していただくような形になると思いますが、ゆくゆくは新『VF』で幅広い方に参加していただき、もう一度『VF』がセガを代表するIPになれるよう、手を貸していただければと思います。 あと、これもお伝えしておきたいのですが、『VF5 R.E.V.O.』のリリース後のゲームバランスに関しては、このDiscordも活用してできるかぎり皆さんのご意見を反映していきたいと思っています。ただ、もっとも注力すべきは新『VF』である、と考えていますので、その点だけはご理解いただければと思います。 新『VF』は、絶対に中途半端なものにはしない ――“VF Direct”では、映像の最後に、『VF』の生みの親である鈴木裕さんからのコメントもありました。: 山田: このプロジェクトを進めるにあたって、鈴木裕さんはお話をうかがいたい方のひとりでした。私が入社したときには『シェンムー』を制作されていたころだったと思うのですが、直接的な接点はなかったんです。今回、きちんと挨拶をさせていただき、新『VF』のコンセプトなどを説明したのですが、「俺も昔考えていたようなことだね」とおっしゃっていました。映像に関しても「これはいいね」と言ってくださったので、シンプルにうれしかったです。 画像は“VF Direct 2024”からのキャプチャー。 ――鈴木裕さんはレジェンドクリエイターですし、モノ作りに妥協しないことでも有名ですからね。: 山田: “VF Direct”では、NVIDIAのCEOであるジェンスン・フアンさんのコメントもいただきましたが、以前に彼が日本の大学で行った講演の第一声が「キミたちは鈴木裕を知っているか?」だったくらいですからね(笑)。それくらい、鈴木裕さんというクリエイターが世の中に与えた影響は大きいです。鈴木裕さんから『VF』を受け継いだ身としては、気合いが入りますね。 横山: 改めて考えると、まさか我々が『VF』に関わるなんて思ってもみなかったことでした。我々はコンシューマー出身ですし、アーケード全盛の当時は、かなり肩身が狭かったですからね。そんな我々からすれば、当時のAM2研は神々しく輝いていたわけです。 そこから25年を経て、AM2研が私の管轄になり、改めて『VF』を作るというのは、非常に感慨深いです。そのうち、私も鈴木裕さんみたいに誰かの作ったゲームを見て「いいね!」と言うのかなって(笑)。 ――ありえますね(笑)。 横山: 真面目な話をすると、『VF』はセガの歴史に刻まれたIPですから、中途半端なものを作る気はありません。中途半端なものになるくらいなら、途中でプロジェクトを止めると思います。それくらいの覚悟で挑んでいます。 山田: 横山は止めると決めた時はマジでスパッと行くので、そうならないように気合をいれています。あとは“ゲームからゲームを作らない”……つまり、いままでにないものを作るという考えかたは大事にしていきたいです。明らかに鈴木裕さんもそうでしたから。 ――初期の『VF』はサラリーマンや、ちょっとヤンチャな人など、いわゆるゲームファンではない層が反応していましたが、それはゲームからゲームを作っていなかったから、ということもあるかもしれません。 山田: ええ。今回もそういう観点が大事なんだろうな、と思っています。そこに関しても『龍が如く』シリーズの最初と共通する部分があるのではないかと思っています。 ――それでは最後に、新『VF』に対する想いと、龍が如くスタジオの今後に関してメッセージをお願いします。 山田: 新『VF』では、イノベーティブで、幅広い層の人が「カッコよくて、おもしろい!」と思えるようなものを作るつもりでいます。シリーズのファンも、そうでない方も、続報をお待ちいただければと思います。ご期待ください! 横山: 龍が如くスタジオは、「つぎも普通に『龍が如く』の続編が出るんでしょう?」と思われる中で、ジャンルをRPGに変更してみたりと、シリーズの枠組の中で皆さんの想像の斜め上を行くものを作ってきたつもりです。ただ、この先は枠組すら無視したフィールドに入っていくことになります。 ひとつは『VF』をイチから新しく作るという使命ですし、もうひとつが『PJ Century』になります。新しい挑戦ですからワクワクしている反面、怖さもあります。もちろん失敗するつもりはないですが、ある意味、失敗する可能性を許容してくれるのがセガのいいところですね。安定しているものだけを作り続けることをよしとしないというか。だからドリームキャストの時代に『シェンムー』とか作っちゃうんです(笑)。 いわば、それがセガのDNAなのかもしれません。だって『VF』を作り続けることに満足できなくなって、「『VF』をRPGにしたらどうか?」みたいな発想から『シェンムー』が生まれたわけで。そういう意味では、龍が如くスタジオは、精神的に『シェンムー』と同じようなことをしているわけです。実際にやっていること自体は違いますけどね。 ――たしかに、精神的なものは受け継がれていると思いますし、それがセガのDNAと言われれば納得です。 横山: 最初からそれが正しいことだと思っていたわけではないのですが、セガで長く働いていると、結果的にそうなってしまう(笑)。そして、そういうチャレンジをする役割を担うのは、いまのセガの中では龍が如くスタジオしかないとも思っています。ですので、今回発表した挑戦的な2タイトルには、ぜひご期待ください。