ブレーキが効かない!…となる前に、ブレーキフルードは定期的な交換が必要です。2年に一度の全交換が目安の理由とは?
2年に一度は交換したい
車輪の回転を抑えるためのブレーキには、フルードと呼ばれる作動液が使用されています。通常、車検時に交換することが多いですが、クルマの走らせ方によっては早く劣化してしまうこともあります。改めて説明をしていきます。 【画像】日頃のチェックでべーパーロックは防げる!「ブレーキフルード」を見る(全7枚)
ブレーキラインに気泡が入るとクルマが止まらなくなる
乗用車のブレーキシステムは、油圧式のディスクブレーキが主流。ブレーキペダルを踏み込むと、ブレーキフルードがマスターシリンダーから押し出され、ブレーキホース内を流れて、ブレーキキャリパーのピストンを押し出し、ブレーキパッドがブレーキディスクを挟み込んで制動力を生み出す仕組みだ。この油圧システムのすべてのカギを握っているのが、作動液=ブレーキフルードということになる。 ブレーキフルードは、ポリ・アルキレングリコール・モノエーテルなどグリコール系が主成分で、エンジンオイルのように潤滑性はなく、サラサラした液体で、沸点が高いのが特徴。新品であれば200℃を超えても沸騰しない。しかし熱の影響で劣化してくると、吸湿性が高くなり、湿気を吸ったフルードは沸点が徐々に下がってくるので定期的な交換が必要。 というのも、沸点が下がって、フルードが沸騰してしまうと、ブレーキラインの中に気泡が生じるため。ブレーキラインに気泡が入ると、ブレーキペダルを踏んでも、その気泡がつぶれるだけで、肝心のフルードが流れない。結果としてキャリパーまで踏力が伝わらず、ブレーキを踏んでも制動力が発生せず、大変恐ろしい目を見ることになるからだ(いわゆるべーパーロック現象のこと)。
フルードの沸点によって規格がある
ブレーキフルードには、その沸点によって規格があり、もっともポピュラーな「DOT3」のフルードだと、新品時の沸点(ドライ沸点)が205℃以上。2年ほど使用すると沸点は140℃ぐらいまで下がってしまう(ウエット沸点140℃以上)。 モータースポーツ用のDOT4やDOT5のフルードの場合、ドライ沸点はもっと高いが、その反面、吸湿性も高く、交換サイクルは短くなる。 交換サイクルだが、車検ごとに交換するのがひとつの目安。ただし、サーキットを走るなら、走るたびにエア抜き作業を行い、エアの量が多くなってきたら全量交換。また、エンジンルームのブレーキリザーバータンクを見て、フルードの色が茶色っぽく変色してきていたら早めに交換。新品のフルードは透明に近い薄い黄色の液体なので、それが濁ってきたら交換時期となる。 余談だが、MT車ならクラッチフルードもブレーキフルードと一緒に交換するのがおすすめ。クラッチフルードはブレーキフルードを流用したもの。ブレーキフルードほど熱の影響は受けないが、それでも鮮度は重要で、劣化が進むと、真夏などにべーパーロック現象が発生し、クラッチペダルを踏んでも、クラッチが切れなくなって焦ることも……。 いずれにせよ、ブレーキフルード(クラッチフルード)は鮮度が命なので、わずかなコストを惜しんで交換を先延ばししたりせず、2年に一度は交換するようにしよう。
藤田竜太(FUJITA Ryuta)