【毎日書評】3つのあいづちを使い分ければ「傾聴」はうまくいく
感情表現から、傾聴の深さを知る
傾聴においては、話し手の心の状態や、もって生まれた資質が大きく関係するもの。また、悩みがない人や、自分の心に関心がない人に対して深い傾聴を試みても、変化がないことは珍しくないのだといいます。 1 on 1ミーティングで、いくら上司が部下のことを丁寧に傾聴しても、部下が業務内容に何も問題を感じていなければ、表面的なただの雑談で終わってしまうことはよくあります。 そもそも、心とか生き方とか、そんなものに興味がないという人は世の中にたくさんいます。 そういう人が傾聴に求めるものは、話してすっきりしたいカタルシス効果(筆者注:感情を外部に発散することによって、心のなかの緊張や不安が解消される現象を利用したもの)しかありません。 一方、深い傾聴で変わっていくのは、自己探究に関心があったり、日ごろから思うところがあったりして、自分の心や気持ちに関心があるような人たちです。(93~94ページより) ちなみに著者は、話すテーマではなく、「話の深さ」と「話し方」にそれが表れるものだと感じているのだそうです。 たとえばラーメンについて語る際、「きのう、たまたま入ったラーメン屋、けっこうおいしかったですよ。醤油豚骨で見た目よりあっさりしていて、餃子セットでお得でした」というような“浅いレベル”で軽快に語る人は、聴き手がいつまで聴き続けたとしても変化は起きないというのです。 しかし「昨日、たまたま入ったラーメン屋、芸術的というか、つくっている人のこだわりというか魂を感じたんですよ(間)。若い店長なのによくあんな繊細なラーメンがつくれるもんだなぁと感心というか、すごいなぁと思って(間)。そうしたら、たかがラーメンなんだけどそのラーメンから「お前は、何でも雑すぎるんじゃないか!」って言われているような気がして(間)。何か自分も丁寧に仕事しなきゃいけないよなぁ、そんな気持ちになったんです(間)」 このように自分の内側に深く触れながら考える人の話し方は、ゆったりとした間や、落ち着いた雰囲気があり、傾聴で変化が起きやすい話し手のタイプです。(94~95ページより) そこには、心の深さがあるのだと著者は述べています。 人は自分の内側の深いところに意識を向け、いままでの経験をベースにものを考え、自分のことを語りながら自信を深く理解するもの。この自己理解の流れを、アメリカの哲学者/心理療法研究者であるユージン・T・ジェンドリンは「フォーカシング」と名づけたといいます。 フォーカシングとは、「個人の内面にあっていままでの体験に深く根ざしているが、ことばでは表現しづらいぼんやりとした感覚(フェルトセンス)に焦点を当て、その感覚を言語化することで自己理解を深め、自己の成長と変化をもたらすことを目指す療法」だそうです。(93ページより) 本書を読み終えるころには、心のなかにあったモヤモヤが晴れ、新たな傾聴の世界にたどりつけるはずだと著者は述べています。よりよいコミュニケーション能力を身につけるため、参考にしてみてはいかがでしょうか? >>Kindle unlimited、2万冊以上が楽しめる読み放題を体験! 「毎日書評」をもっと読む>> 「毎日書評」をVoicyで聞く>> Source: 翔泳社
印南敦史