『ベイブレード』25周年、なぜ伝承玩具“ベーゴマ”が平成・令和の子どもを熱狂させる? “1対1”勝負論の不変的な強度
2023年7月にタカラトミーから発売された『BEYBLADE X(ベイブレードエックス)』。10万個を超えればヒットと言われる玩具業界で、国内累計出荷数が200万個以上を突破する大ヒット商品だ。この「BEYBLADE X」、もとを辿れば初代「ベイブレード」の発売は1999年。今年で25周年を迎えるロングヒットコンテンツである。少子化という逆風が吹く玩具業界の中で、なぜ「ベイブレード」は四半世紀にわたって愛され続けるのか。そこには子ども時代“第1世代”だった担当者たちのベイブレード愛があった。 【写真】ベイブレード、25年でどう変化? 第一世代から第四世代まで全公開
■過去にベーゴマで2度の“失敗”も…それでもベーゴマにこだわり続けたワケ
販売当初は、これまでの『ベイブレード』を愛してきた既存ユーザーの購入が大半を占めていた「BEYBLADE X」。しかし2023年10月のアニメ放送、クリスマスを経て新規ユーザーとなる小学生ら子どもたちの購入が激増。今は購入者の8割を子どもが占めるという。 「やっぱり年末年始を超えたあたりから広がりをリアルに感じるようになって。自分が担当した商品の中でも一番の感覚だったので、とても嬉しかったですね」(タカラトミー グローバルベイブレード事業部 マーケティング課・篠永恭平さん) 新規ユーザー獲得の背景はそれだけではない。第4世代『BEYBLADE X』はよりスポーツ性を増し、プレイヤーだけではなく観客をも魅了するGEAR SPORTS(ギアスポーツ)へと進化させていることもあり、これまでサッカーやバレーボール、ラグビーなどスポーツの試合で体験会を開催するなど、「一度触ってもらう」機会を増やすことに注力した戦略も功を奏した。 「『BEYBLADE X』はこれまでの世代の要素をすべて詰めた上で、“X(エクストリーム)ダッシュ”という新たないいギミックを発明できた自負があります。一度実際にやってみてもらえば、その面白さが伝わる確信がありました。結局はモノの面白さが全てなので」(タカラトミーグローバルベイブレード事業部 マーケティング課 堀川亮さん) “X(エクストリーム)ダッシュ”とはスタジアムと呼ばれるベイブレードを回す台の周囲についた“レール”とコマの軸についた“ギヤ”、ふたつの凹凸がかみ合うことで、ベイブレードが加速する仕組みのこと。このギミックによってレールに触れるととコマが加速。さらには加速したままコマ同士がぶつかりやすくなる設計がされているため、過去最高に激しいぶつかり合いが起こるようになった。一 「前の世代ではコマ同士が激しくぶつかることもなく数分が経って、だんだん自分のコマが減速して『あ、負けるな……』と思いながら時間が経つのを待つ、みたいな尻すぼみ感があるバトルが時々あったんです。やっぱり盛り上がるのはぶつかり合うところだからなのでそこを強化しました。1回のバトルもSNSにアップしやすい1分以内で終わるように調整しており、時代にも合った進化ができたと思っています」(堀川) いまや、タカラトミーを代表する商品のひとつとなった「ベイブレード」だが、タカラトミーの前身、タカラにはすでにコマの玩具として「すげゴマ」(1995年)「バトルトップ」(1997年)を発売した過去がある。しかし、思うような業績を残せなかった経験から、発売には難色を示す社内の声もあった。それでも言わば“三度目の正直”に挑戦しようと決意した理由は、コマそのものの魅力にある。 「コマは、紐を巻いて自分の力で動かす。その自分の力がのったコマが、相手と激しくぶつかり合って勝利するのが気持ちいいんです」(篠永) 高速回転するコマ同士をぶつける遊びは本能に根差したおもしろい遊びだった。コマの魅力を信じた開発チームは、社内の逆風にも負けず開発を継続。当時から人気となっていたTCG(トレーディングカードゲーム)に着想を得て、カードでデッキを組むようにコマのパーツを自分自身で組み替えられるというカスタマイズ・コレクション要素を取り入れた。コマ自体の魅力と、流行から時代を読んだ発想力。ふたつを兼ね備えた第一世代となる『爆転シュート ベイブレード』(1999年)は爆発的にヒット。全国の小学生を熱狂の渦に巻き込んだ。