『ベイブレード』25周年、なぜ伝承玩具“ベーゴマ”が平成・令和の子どもを熱狂させる? “1対1”勝負論の不変的な強度
■爆発的ヒット後の衰退ムードの中、起死回生にかけた4年間
しかし繁栄のあとには衰退あり。トレンドを巻き起こしたものの宿命を『ベイブレード』も避けては通れなかった。 「簡単に言えば飽きがきて、子ども達が他の遊びをするようになったんです」(堀川) ちょうど2008年の第二世代スタート期に入社した堀川さんは、当時の状況をこう振り返る。巻き返しとなる新しいギミックを開発することに注力した。開発の目的は「より面白いバトルを生み出す」という明確な一点のみ。しかしその方法は無数に存在する。より激しくぶつかり合うためにスタジアムを狭くする、回転力を上げてスピードを速くする……。いろんなアイデアをもとに試作品が作られ、イメージとは違う結果になったことも数えきれない。 「『ひとつの試作品を作るのにも1ヵ月くらいかかるので一年間で試せるモデルも限られるので、試作したものの中でシリーズ化されたのは1%くらいですね」(堀川) 多くの廃案を経てたどり着いたのは「コマの周囲をプラスチックからメタルに変更する」という素材の変化。コマ自体のビジュアルを強化するとともに、ぶつかった時の音や激しさもグレードアップ。第二世代となる『メタルファイト ベイブレード』は見事、2度目のヒットに成功した。
■“妖怪ウォッチ”の記録的ブームで難航した2度目の危機 突破口は意外な人からの一言
二度目の危機は第二世代の人気が落ち着き、第三世代開発へと舵を切った2013年。奇しくも時期がこちらも記録的ヒットとなった“妖怪ウォッチ”ブームと重なり、他製品は軒並み苦戦状態。社内にも「しばらくは何を出しても売れない」という雰囲気が蔓延していたという。しかしベイブレード開発チームは、「物を集めることにみんなが集中している今だからこそ、『ぶつけて壊す』遊び方があったら新鮮に映るはず」と、新しいテーマを発案し、開発をスタートした。 「アニメでもよく相手がバラバラに破壊する演出ってありますよね。そこで『相手のコマを倒して壊せたら面白いんじゃね?』くらいの単純な発想ではじめは進めていたんですが、いざ試作品を作ってみたら再起不能なほどにバラバラになってしまって。しかも破片が飛び散って危ないし、これは無理だと思って一度諦めたんです」(堀川) しかしその後の路線はどれも不発。開発は一時暗礁に乗り上げた。そこで同僚である別部署の女性に相談。チーム内のいわゆる玄人視点のアイディアに限界を感じ、コマやバトルに全く興味のない視点からのアドバイスを求めた。すると彼女からは「相手のコマが壊れたらいいんじゃないですか。そういうのってスカッとして気持ちがいいし」と返事が。彼女へのイメージからは遠い、意外な返答に「ぶつけて壊す」路線にはやはり需要があると確信。再チャレンジを決意した。今回も試作品の山を築きつつも、現状のぶつかる毎にパーツが外れて最終的に3つに分かれるコマの開発に成功。分裂したコマが万が一にもスタジアムの外まで飛ぶ可能性を考慮し、安全面を優先してスタジアムを覆うカバーを付けることになった。 「安全すぎて面白さが薄れてしまうのではないかと最初は危惧していたのですが、カバーを付けることでばらけたパーツもスタジアムの中でアクションするから、より迫力が出せるようになって。この時に『これはいける』と確信しました」(堀川) かくして第三世代『ベイブレードバースト』(2015年)が発売。見事3度目のヒットとなった。