熊本地震の被災地で設置する「共通投票所」 公選法改正で可能に
熊本・南阿蘇村以外では全国の3市町で設置
共通投票所は、さらなる投票率の向上を目的としています。しかし設置する自治体は少なく、北海道函館市、青森県平川市、長野県高森町の3自治体しか手を挙げませんでした。なぜでしょうか? 「共通投票所では、自治体内の有権者なら誰でも投票が可能です。そのため、二重投票というアクシデントが起きる可能性があるのです。それをどう防止するのか? といった心配が自治体側にはあるようです。総務省では、各投票所を回線でつないで二重投票の防止を呼び掛けていますが、人口の多い大都市ではチェック体制が煩雑になってしまいます。逆に人口の少ない町村では回線などのシステムを導入する費用や人件費が負担になっているようです。そのため、検討はしたものの今回は見送ったといった自治体が多いようです」(同) 設置に二の足を踏む自治体が多い中、上記の3自治体のほかに新制度が有効活用されたのが、熊本地震で大きな被害を出した熊本県南阿蘇村です。 被災地では投票所となる体育館や公民館は避難所として使用されています。そうしたことから、投票所を確保するのが難しい状況でした。しかし、参政権は憲法で保障された権利です。地震を名目に、自治体が有権者の権利を奪うことはできません。そこで南阿蘇村は、投票所を集約する形で3か所の共通投票所を設置することに決めました。 奇しくも、新たに導入された共通投票所が災害時でも有権者の権利を守るという役割を果たしたのです。 (小川裕夫=フリーランスライター) ■「共通投票所」が設置される4自治体(設置場所が確認できます) ・北海道函館市 ・青森県平川市 ・長野県高森町 ・熊本県南阿蘇村