「俺は俺。ヤンチャじゃないと面白くない」浦和復帰の原口元気が“本来の姿”に意欲「アタッカーとしてもう1回、輝きたい」【インタビュー2】
久保に訊く「カットイン、どうやるの?」
30代でウイングというのは、フィジカル的にもかなり厳しい。実際、若い頃にサイドアタッカーとして一時代を築いた松井大輔や乾貴士(清水)らも、30代になってからは運動量の少ない中盤にポジションを移し、技術や戦術眼を駆使しながら生き残りを図った。 「僕自身、一番良かった時はブンデスでもトップクラスのインテンシティだったという自負があります。1試合で12キロ以上を走って、30本以上のスプリントを記録するようなことを毎試合やっていたシーズンもありましたからね。それだけ動けていたということなんです。 その頃に比べると、今は下がってしまっている。30代になって1年2か月も公式戦から遠ざかったことは想像以上に大きく響いているなと感じます。やっぱり身体の反応も悪いし、20代の頃みたいにパッと戻るような感覚はない。本当に努力しないと、そのレベルには到達しないという危機感を持ちながら、今は取り組んでいます」 こう語る原口が「自分はまだまだだな」と心底、感じたことがある。 「僕が個人的に師事している大学の先生に、この前、『元気、このあいだのカットインはないよ。何回ボールに触ってるんだ』と言われて、その通りだなと感じました(苦笑)。やっぱりフィジカル面がプレーを難しくしているし、思うように動けていないので、そこをしっかりやらないと。取り戻さないといけないことはすごく多いです。 タケ(久保建英=レアル・ソシエダ)に『カットイン、どうやってやるの?』と訊くと、『外に行くフリして、中に行くだけですよ』みたいに言うけど、そんな簡単なことじゃない。やっぱり彼みたいにキレイにカットインできないとダメですよね。違いを出せるようにやっていくしかないと思ってます」 現状打破を固く誓い、懸命に取り組んでいる原口。それはプレー以外の部分にも言えることだ。浦和でグングン成長していた10年前の原口は良い意味でエゴイスト。「自分が、自分が」という鼻息の荒さを前面に押し出していた。 だが30代になった今、人間的に成長した分、丸くなった印象もある。それが必ずしもプレーヤーとしてプラスになるかというと、そうとも限らないのである。 「代表でもよく一緒にサブ組にいた(堂安)律(フライブルク)と話して、メンタル的に支えていた部分もありましたけど、自分がそっち側に回ってちゃダメなんですよね(苦笑)。 そういう話は関根(貴大)ともよくしますけど、先輩としてチームをまとめなきゃいけない立場になって、そういう仕事もしなきゃいけないのは確かだけど、やっぱり自分が一番輝きたい。俺は俺だし、やっぱりヤンチャじゃないと面白くない。30代とかそういうのは取っ払ってやっていきたいですね」 本人もそう語気を強めたが、「尖ったところのない原口は見たくない」と思う先輩やチームメイト、ファンは少なくない。彼らのためにも20代前半の頃のような熱をピッチ上で示してほしい。ここからの変貌ぶりに大きな期待を寄せたいものである。 ※第2回終了(全3回) 取材・文●元川悦子(フリーライター)