「空の女王」ジャンボ、目の前で見られるラストチャンス到来か 沖縄にある国内唯一の整備専門会社が見学ツアー検討
かつて「空の女王」とも呼ばれ、ANAやJALをはじめ、世界中で主力として活躍した超大型機「ボーイング747」(通称ジャンボ)。次々に運用を終え、国内では成田空港を拠点とする貨物専門会社「日本貨物航空」(NCA)しか運航しておらず、なかなかお目にかかれない。機体の製造も終了したが、沖縄で間近に見られる最後の機会が訪れようとしている。今年1月、那覇空港にある国内唯一の航空機整備専門会社がNCAから整備業務を請け負い、格納庫での整備見学ツアーを模索し始めたからだ。一体、目の前ではどんな光景が広がるのか。成田で始まった整備の詳細や、那覇へのジャンボ受け入れに至る水面下の奮闘を取材した。(共同通信=宮本寛、桑折敬介) 【写真】「空の女王」ジャンボ機生産が半世紀で幕 大量輸送の立役者が挑む「次章」とは 23年
▽半世紀の歴史に幕 昨年1月、ジャンボは最後の1574機目が米アトラス航空に引き渡され、半世紀余りの歴史に幕を下ろした。1967年から製造され、70年代の空の大輸送時代を支え、日本でも海外旅行が身近になった。前方が2階建てでエンジンは4基。旅客機では最大乗客数500人超で、優雅な姿から「空の女王」とも呼ばれた。 だが、脱炭素化を背景に航空機の主流は燃費性能が優れたエンジン2基の中・小型機にシフトチェンジ。格安航空会社(LCC)の成長もあって徐々に需要が低迷していった。JALでは2011年、ANAは14年に全機を引退させた。 ボーイング777や787、エアバスA350に主役の座を譲ったジャンボだが、NCAだけは747―8F(Fは貨物専用機のフレイターを指す)を運航する。747の改良型「747―8」は全長が76・3メートル。尾翼の高さは地上19メートルを超える。 ▽きっかけは不具合救援
そんな超大型機を迎え入れようとしているのが航空機整備専門会社「MRO Japan」(MJP)だ。 全日空グループなどの出資で2015年に大阪(伊丹)空港で設立された。沖縄県が建設した格納庫を借りる形で19年に那覇空港に拠点を移した。 航空会社は定期的に必要となる長期間の点検や修理を低コストの中国や香港、シンガポールに外注するのが一般的だ。だが新型コロナウイルス禍で国内の航空会社が海外に委託しづらくなり、MJPが代替需要を取り込んだのだ。 これによって、2020年度に売上高が前年度比4・7%増の27億円となり、当初目指していた21年度からの黒字達成は1年前倒しとなった。その後も機体の塗装作業や海外の航空機整備を新たに請け負うなどして成長を続けている会社だ。 そして沖縄と千葉にある両社が接近するきっかけは、21年10月に発生した機体不具合の救援だった。 飛行中のNCA機に突如、不具合が発生。那覇空港に臨時で着陸した際、成田から派遣されたNCAの整備チームを迅速にサポートして機体を送り出したのが、那覇に整備施設を持つMJPだった。これを機に、両社は22年にパーツ整備の契約を締結。そして今回の提携に至ったという。