余った「再生可能エネルギー」電気は30万世帯分…太陽光普及で出力制御、蓄電池巡る新ビジネスも
電力業界が変革期を迎えている。電力小売りの自由化で新たに家庭向け販売に参入した新電力会社の中には、競争に敗れて倒産したり撤退したりするケースが目立ち始めた。太陽光などの再生可能エネルギーの普及は急激に進み、関連事業を含めて新たなビジネスチャンスを見いだして参入する企業もある。2011年の東日本大震災後、大きく変わった業界の今を追った。(松本晋太郎) 【図表】出力制御を逆手に取った蓄電池ビジネス…JR九州などが設けた「でんきの駅」
「当社は、以下の内容で出力抑制の指示等を行いました」。九州電力の送配電子会社はホームページで連日、太陽光や風力などの再生可能エネルギー発電の事業者に発電の停止を指示したことを公表している。6月12日の指示の合計出力は最大200万キロ・ワットと、原子力発電所2基分に上った。
国が認める「出力制御」と呼ばれる措置で、九電は2018年度に離島以外で全国で初めて実施し、23年度までの累計は458回に達した。23年度に抑制された電力量は一般家庭30万世帯分に匹敵する。24年度も頻発している。
国が指示を認めるのは、需要を上回る電気が送電線に流れ込むと周波数が乱れ、停電につながるからだ。再生エネで発電された電気を一定の期間、一定額で買い取ることを約束した国の政策「固定価格買い取り制度」が始まった12年以降、太陽光を中心に爆発的に再生エネが普及し、天候次第で電気が余るようになった。
発電事業者は出力制御で売電量が減る。太陽光発電設備を販売するサニックス(福岡市)の担当者は「収益化を目的に太陽光発電に投資するのは難しくなっている」と指摘する。
逆手のビジネス
一方、電気が余る現状を逆手にとったビジネスには投資が相次いでいる。この1、2年、電力会社の送電線につなげて充電したり放電したりする「系統用蓄電池」に、多くの企業が参入しているのだ。大手電力などが電気を売買する卸電力市場で、電気が余って安くなる時間帯に調達し、高くなる時間帯に売電することなどで収益を上げる。