麻疹は、昔も今も「命定め」に変わりはない。麻疹対策には、高いワクチン接種率の維持が必要【小児科医】
最近、麻疹(はしか)の患者が発生したという報道が増えています。麻疹は、ワクチンを接種することで「命定め」の病気ではなくなったはずです。 小児科医の太田先生は「それでもワクチン接種率が下がれば、かつてのようにアウトブレイクが発生します。油断はできません」と言います。 「小児科医・太田先生からママ・パパへ、今伝えたいこと」連載の#42は、麻疹の流行についての情報です。 【画像】赤ちゃんの予防接種時のおすすめの服装
国内での麻疹発生は、免疫が低くなっている人が国外から持ち込む例が増えているから
2024年2月末ごろから、日本国内で麻疹の患者が出たという報道が増えています。 国内で麻疹が発生している一番の原因は、麻疹ワクチン歴がゼロか、一度接種しただけで年をへて免疫が低くなっている人が国外から持ち込む例が増えたからです。 麻疹は空気感染するので、発症者と接触した免疫の低い人は高い発症リスクを持っています。 諸外国でのアウトブレイクは、新型コロナ対策に忙殺されて麻疹対策にまで手が回らなくなった地域でワクチンゼロ投与者が急増したため。 その結果、未接種者の患者が急増!さらに、ワクチンを躊躇する気持(Vaccine Hesitancy)を引き起こす正しくない情報の拡散に惑わされて、接種率まで下がる状況が起きています。 WHOによると、コロナ流行前の2019年時点で、西太平洋地域で麻疹の排除認定がされているのは日本を含めた9カ国・地域(オーストラリア、ブルネイ、カンボジア、香港、日本、マカオ、ニュージーランド、韓国、シンガポール)だけです。その後は増えていませんし、この排除国でもワクチン接種率は低下しています。 アフリカ等ではゼロ接種者が増えたことと、麻疹対策先進国でも接種率の低下が起こり、その影響でアメリカも含めた世界のあちこちでアウトブレイクが発生してしまっているのです。
麻疹対策は、高いワクチン接種率の維持だけ。最良のワクチンの受け方は?
麻疹とは、高熱とひどいせき、そして発疹の出る病気です。肺炎や脳炎などの合併症が起き、命を奪われることも多く「命定め」と言わてきました。今でも特効薬はなく「命定め」に変わりはありませんが、ワクチン接種をしておけばかかりません。ワクチンは救いの神です。麻疹を無くすためには定期接種対象者の接種率95%以上の維持が必須です。 麻疹を予防するワクチンは、MRワクチン(麻疹風疹混合ワクチン)です。1歳代の第1期と小学校入学前の第2期にそれぞれ1回ずつ接種します。 第1期は1歳の誕生日になってすぐに受ける(誕生日でも可能です)ことが大切です。就学前年の第2期は予診票が届いたら早々に受けましょう。多くの自治体で6月ごろまでには届くと思います。夏までに2回目の接種を済ませておくことを心がけましょう。 国内にいる子どもたちは、2度の定期接種が済んでいれば恐れることはありません。そして定期接種開始以前に生まれた50代以上の人の大半は、感染歴があるので発症しません。まさに「命定め」を乗り越えたサバイバーです。平成20年度から24年度までは、中学1年生と高校3年生は2度目の接種機会が設けられていました。その時代に接種済みの人たちも免疫がついているので接種の必要はありません。