【独自】容疑者が検索した「安倍元首相銃撃犯」の名前…黙秘貫く官邸・自民党襲撃犯の検索ワード判明 予兆掴めない「ローン・オフェンダー」専門部隊新設へ【2024年重大ニュース】
殺虫剤やワインボトル…日用品が“道具”に
このように、筆者やカメラマンが現場で見たものは、いずれも「家の中にあるもの」、もしくは「すぐに手に入るもの」だった。その後の取材で、臼田容疑者が“襲撃”のため準備した「道具」がさらに明らかになる。 臼田容疑者が身につけていたのは、「黄色いタイベックスーツ」に「ガスマスク」。自民党本部前で噴射したものは、「高圧洗浄機」と「クマ撃退スプレー」で、機動隊員に投げつけた火炎瓶は「スリム・ワインボトル(450ミリリットル容量)」。前述した「カラフルな大量の箱」は、21個のポリタンクで、中身はほとんどがガソリンだった。さらに、車からは「車のスピーカーから「ワーニング、ワーニング、危険です、危険です」などの音声を流していた。
「山上」「木村」と検索しながら…自宅で準備か
ワインボトルなど簡単に手に入る「道具」もあれば、なかなか一般生活では購入する機会が少ない「ガスマスク」など、さまざまだ。それらの準備をした“時期”が、今回FNNの取材で明らかになった。 ▼2024年 春ごろ 火炎瓶を作るためのガラス瓶の購入を始める ▼2024年 8月~9月頃 「山上」、「木村」の名前を検索 ▼2024年 10月「ローン・オフェンダー」「ローンウルフ」などと検索 ※「ローンウルフ」は「ローン・オフェンダー」と同義語 臼田容疑者の自宅からは25個のガラス瓶も押収されていることから、自宅で火炎瓶製造を着々と進めていた可能性がある。安倍元首相銃撃事件の山上被告も自宅で手製の銃を製作していたほか、木村被告も岸田前首相に向けて「手製の爆発物」を投てきした。 犯行を計画しながら、山上・木村両被告の事件を参考にしたのか。手口だけでなく、自分が「ローン・オフェンダー」の意味を調べながら、自らがそうであるという自覚を高め、犯行に向かっていったのか。逮捕以来、完全黙秘を貫く臼田容疑者の謎に迫る「検索履歴」といえる。
「ローン・オフェンダー」専門捜査部隊を新設へ
こうした組織に属さない「ローン・オフェンダー」の兆候をどうつかみ、テロの未然防止にあたるのか。警視庁は臼田容疑者の事件の前から組織改編を計画していて、2025年4月をめどに創設する。 現在は、右翼団体や過激派(左派)を専門とする部門がそれぞれ「課」として置かれているが、2025年4月以降は、既存の「公安1課」から「公安4課」の名前を残しながら組織改編し、「ローン・オフェンダー」を専門に捜査する課は、「公安3課」という名称で新設される。これは全国で初の試みだ。 「ローン・オフェンダー」は、犯行の予兆をつかみにくいとされている。これまでは、危険人物を探すための情報収集を行う部署と、ホームセンターなどの店舗で爆発物の原料となる化学物質を購入した人物の身分確認などの対策を行う部署が分かれていたが、新設される“ローン・オフェンダー課(公安3課)”では一元化される。また、刑事部や生活安全部などの別の部門が、職務質問やパトロールで得た前兆情報を集約して捜査するなど、まさに組織を挙げて「ローン・オフェンダー」に対処するという。 完全黙秘を貫く臼田容疑者の事件では、まだまだ真相が解明されていない部分も多い。日本の政府中枢を狙った前代未聞の事件―。同様の犯罪は、「ローン・オフェンダー専門部隊」の新設によって今後、どれだけ未然に防いでいくことができるのか、新たな取り組みを注視したい。 (社会部・警視庁キャップ 中川真理子)
中川 眞理子