2024年は日本映画が躍進 映画評論家が選ぶ2024年のベスト3 『ルックバック』などを選出
■「2024年で唯一、涙腺が決壊した」 吉沢亮主演『ぼくが生きてる、ふたつの世界』
最後、3つ目に松崎さんが挙げたのは、吉沢亮さん主演の映画『ぼくが生きてる、ふたつの世界』です。作家・五十嵐大さんの実話に基づいた物語で、耳のきこえない両親の元に生まれた、耳のきこえる・コーダの息子を描く物語です。 「この映画の最大の特徴は、設定自体は特殊に見えるのに、ものすごく普遍的な家族の話で、特に母親と息子の関係を描いた作品になっていて、ものすごくラストで感動する。僕は2024年で唯一、涙腺が決壊した映画だった」 「この映画に出てくるろう者の方は、実際にろう者の俳優を起用しているところがポイントで、『コーダ あいのうた』(2022年日本公開)という映画がアカデミー賞を受賞したことをきっかけに、キャスティングの在り方が変わったと思うんですよ。“ろう者を演じるのはろう者の俳優であるべきだ”っていう考え方がちゃんと日本にもやってきて、やっとこういう作品が映画の世界でも作られるようになったなと」
■日本映画のアカデミー賞受賞で映画界に変化は
2024年の日本映画界を振り返ると、アカデミー賞やカンヌ国際映画祭など、国際的な映画祭での日本作品の活躍が目立ちました。松崎さんは、評価された作品について“ある特徴”があるといいます。 「2024年はアカデミー賞で『ゴジラ-1.0』と宮﨑駿監督の『君たちはどう生きるか』が賞をとったことに始まって、日本映画が海外で評価されることを見聞きすることが多かった」 「最大の特徴は海外を目指して作ったわけじゃないのに、海外で評価されたという点だと思うんですよ。自国で作って自国の観客が見ても面白いものを作るのは大前提な気がする。そこで質の高い物をつくればおのずと海外に持っていったとしても、そこで高く評価されるんじゃないかということを、特に『ゴジラ-1.0』は教えてくれた気がします」 「『ゴジラ-1.0』の場合は作品そのものだけでなくて、アカデミー賞の場合はこれだけの予算でこれだけの映像を作ったのかっていう点が評価されたわけです。(受賞を受けて)2024年から始まったことが2025年以降に公開される映画に波及していって、(日本で公開された映画が)海外でも高い評価を得ていく映画に変わっていくんじゃないか」
【松崎健夫さんプロフィル】
映画評論家としてテレビ・ラジオ・雑誌などの様々なメディアで活躍。デジタルハリウッド大学特任准教授、日本映画ペンクラブ会員、国際映画批評家連盟所属、ゴールデングローブ賞の投票権を持つ。