日本にならえ? スモールトークの国、米国でも「雑談不要」サイレントサービスの需要が急増中
「雑談より静寂をくれ」?
「雑談不要でお願いします」 「スモールトーク」が文化として根付いている米国でも、とにかく静かに、会話をせずにサービスを受けたい人たちが増えている。 【画像】利用者は「心置きなく目を瞑ってリラックスしたり、ただ遠くを見つめたり、ノートパソコンで仕事をしたりしている」 こうした変化を受けて、美容院や配車サービス、マッサージなど、以前はちょっとした世間話や雑談をするのが常だった場所で、予約の時点で雑談不要を指定できる「サイレントサービス」を提供するところが増えている。 ノースカロライナ州にある美容院「サンデーサロン」では、雑談をしない「サイレントカット」というサービスをパンデミック中の2021年から提供しはじめたという。 「マスクの着用により、スタイリストと顧客のコミュニケーションや距離感の取り方が難しくなった」ことがきっかけだとオーナーのひとりであるアンドリュー・エドワーズは米誌「タイム」に語っている。 当初はこのサービスが「どのように機能するのかわからなかった」が、一定数の顧客はこのサービスを気に入っているという。 利用者は「心置きなく目を瞑ってリラックスしたり、ただ遠くを見つめたり、ノートパソコンで仕事をしたりしている」そうだ。 「言葉の壁があったり、見知らぬ人と世間話をすることにストレスを感じている人たちにも人気があります」
人々が「静寂」を要求するようになった背景
配車サービス業界でも、ウーバーとリフトのどちらも「サイレントライド」という「運転手と雑談をしない」オプションを提供している。 リフトでは高級車や大きめの車を選択した乗客のみサイレントライドを選択できる仕様になっており、2023年は乗客の約13%が選択した。この数値は急速に伸びており、今後も需要が拡大するとみられている。 ほかにも「サイレント・ブッククラブ」という「みんなで集まるがほぼ会話をせず、静かに読書をする会」というひと味違ったソーシャルイベントも人気を集めている。 同誌によれば、その支部は世界各地にあり、2023年の500から2024年現在は1500以上に急増している。 日本から米国に上陸したラーメン店「一蘭」の、各席が壁で仕切られていて、店員と顔を合わさずに「ひとりで静かに食せる」飲食スタイルも好評を得ている。 また米国では、店員とやり取りをせずに買い物ができるセルフチェックアウトの普及や利用率が記録的な水準に到達していると同誌は述べている。 人々が「サイレント」を要求するようになった背景には、パンデミックにより人と接する機会が減ったこと、また、人々がそれに慣れ、スモールトークをしない環境により快適さを覚えたことがあるようだ。 社会的ネットワークを研究するラトガース大学の教授ジェシカ・メソットは「国が二極化していることを理由に、話すことを避けたがる人もいる」とも指摘している。 彼らは意見が異なったり、気に障る物言いや発言をされたりして、危うく「口論を始めたくない」のだという。 前述の美容院のオーナーは、雑談なしのサイレントサービスを提供することで「ある人にはリフレッシュの場を、別のある人には会話をしなくて良いという安心感を与えられている」と語っている。 一方で、同教授は「静けさを追求し、対面での交流が減少することで孤独感が増す可能性がある」点には注意が必要だと同誌に述べている。
COURRiER Japon