若者へ「黙ってろ」と言う上司が“組織を殺す”必然 「ベテランの経験、カン」が通用しない時代になって⋯では「強いチーム」はどう作る?
■「経験則が通じない場面」も出てきている 問題の複雑性と難易度が高まる中、どのような問題も解決できる「万能な思考法」などない。「既存の思考」を用いれば解決できることばかりではないのも現実である。 増殖する「厄介な問題」に対処するうえで大切なことは、「厄介な問題」は現場だけでは解決できないということを知ること、そして、「多様な思考法」を柔軟に使い分けることである。 一般的に現場というところは、経験がものを言う世界である。常に問題を抱えている現場にとって、経験が「ある」か「ない」かは絶対的な違いとなって表れる。
しかし、「上司をはじめベテラン人材が力を発揮する」という前提は、反復性の高い問題が発生し、その問題の原因も比較的単純であることだ。 そういうときには、ベテランの経験やカン、コツは有効だが、その解決策も前例のやり方が有効とは限らない、「これまでの経験則が活きない場面」も増えている。 とはいえ、経験値の高いベテランが幅を利かすようになると、経験の浅い若手はものを言いづらい雰囲気になってしまう。 これまで経験したことのないような問題に遭遇したとき、「縦」の関係ばかりに依存し、過去の経験に縛られ、発想が固定化していることは、逆に問題解決の阻害要因となりかねない。
大事なのは、多様性のある意見やアイデアに積極的に耳を傾け、前向きな衝突を生み出し、議論を「混ぜる」 ことである。 性別、年代、国籍、経験など多種多様な人材をミックスさせることが、「新しい現場力」には不可欠だ。多様さを活かすことが、競争力強化につながることは間違いない。 女性社員、若手社員、外国人社員、キャリア採用社員などが集まり、ひとつの問題に対して異なる視点、異なる発想で意見をぶつけ合いながら解決に導いていく。これこそが「新しい現場力」のダイナミズムだ。
「混ぜる」ことによって、これまでの価値観が変容し、現場の異質に対する受容性は高まっていく。 ■経験に縛られない人に「思い切り任せる」 しかし、これまでの組織やチームに、多様性をたんに「加える」だけでは何の変化も起きない。現場は基本的には変化を嫌う。 安定性が求められる現場にとって、「異分子」が加わることは安定性を損なうリスクが高まる。だから、どうしても同質性、硬直性から脱することができない。 これまでの経験則がまったく活かせない、逆に邪魔になると判断する場合は、経験に縛られない人たちに「思い切り任せる」ことも得策だ。