「木下恵介アワー」を毎日放送中、「あしたからの恋」と「たんとんとん」の放送もスタート 両作品の見どころに迫る
日本の映画史に残る傑作「二十四の瞳」をはじめ、日本初のカラー映画「カルメン故郷に帰る」や数々のホームドラマなど、不朽の名作を世に送り出してきた木下惠介監督。BS松竹東急(全国無料放送・BS260ch)では、当時「木下恵介アワー」(TBS系)で放送されたテレビドラマの中から、「あしたからの恋」を7月9日(火)より毎週月~金曜に、「たんとんとん」を7月13日(土)より毎週土・日曜に第1話から放送する。そこで本記事では、両作品のあらすじや見どころを紹介していく。 【写真】「あしたからの恋」にて谷口修一を演じる林隆三と、谷口常子を演じる山岡久乃 ■文化功労者にも選出された木下監督の思い 木下監督は、1943年に映画「花咲く港」で監督デビューを果たすと、1951年に「カルメン故郷に帰る」で日本初の長編カラー映画に挑戦。1954年には「二十四の瞳」を公開し、ゴールデングローブ賞の外国語映画賞などを受賞した。 その後、1967年にドラマ枠「木下恵介アワー」がスタートするなど、ドラマ監督としても活躍の幅を広げていく。その結果、1991年に国の文化功労者に選出された。黒澤明監督とともに日本映画の最盛期とも言われる時代を作った一人とされており、彼の作品は今もなお多くの人の心に残っている。 そんな木下監督の手掛けてきたジャンルは多岐にわたるが、人間の強さや弱さ、喜びや悲しみなどの表現を通して“本当の人間”を一貫して描き続けたことで知られている。とあるインタビューでは「映画監督っていうのは、本当の人間を描くために、毎日毎日考え日夜苦労しているわけです」と語っていた。 ■老若男女の恋愛騒動を描いたホームドラマ「あしたからの恋」 BS松竹東急では、7月9日(火)朝7時30分より毎週月~金曜に「あしたからの恋」(全32話)を放送する。本作は、和菓子屋一家とサラリーマンの家庭で起こるさまざまな出来事や、老若男女の恋騒動を描いたホームドラマで、1970年4月より「木下恵介アワー」にて放送されたドラマだ。 和菓子屋の看板娘である長女・和枝(尾崎奈々)は、縁談は多いが本人にその気がなく、片っ端から断っている状況が続いていた。そんなある時、和枝に縁談を断られた友人の仲立人として、ハンサムな好青年・直也(大出俊)が店にやって来る。勝ち気な性格の和枝は喧嘩腰で直也を追い出すが、別の日に二人はバッタリと偶然の出会いを果たし――。 二組のカップルを中心に物語が進んでいく本作。何か大きな事件が発生するわけではなく、ホームドラマらしい明るく軽快なストーリーで、見終わった後はどこかホッとするような、爽やかな後味のドラマに仕上がっている。 主演は、和菓子屋「菊久月」の店主・谷口福松を演じる進藤英太郎さん。同じ「木下恵介アワー」内の作品「おやじ太鼓」で頑固親父を演じた実力派俳優だ。そして、彼の妻役は「渡る世間は鬼ばかり」や「肝っ玉かあさん」など数々のホームドラマに出演する山岡久乃さんが担当。実力派俳優たちによる心温まるホームドラマは一見の価値ありだ。 ■母と子の情愛をきめ細かく描いたホームドラマ「たんとんとん」 7月13日(土)朝10時30分より毎週土・日曜に放送するのは、1971年に「木下恵介アワー」で放送されていたドラマ「たんとんとん」(全26話)。タイトルは、童謡「肩たたき」の歌詞から取ったものだと言われており、母と子の絆をやわらかく描いた作品となっている。 舞台は、下町のとある大工のごく普通の家庭。ある日、突然一家の大黒柱である父親が急死してしまう。これまで甘えてばかりいた息子の健一(森田健作)が、父の死をきっかけに激変し、残された妻・もと子(ミヤコ蝶々)を支えるようになる。葬儀を済ませると、健一は高校を中退し家業を継いで、一人前の大工を目指すと宣言するのだが――。 母親のもと子役を演じたのは、漫才師としての経歴を持つミヤコ蝶々さん。夫の死で途方に暮れるも、健一や周囲の人たちに支えられながら強く生きる姿を明るく演じた。 また、息子の健一役を演じたのは、数々のドラマに出演し、歌手としても活動、その後千葉県知事も務めた森田健作さんだ。大学進学を諦め、父親の跡を継ぐ決意をする姿は、母親への想いがひしひしと伝わってくる。さらに、健一とともに働く大工の江波竜作役で近藤正臣さんが出演するなど、実力派俳優が脇を固めている 本作では、母親と息子のまるで友達のようなテンポの良いやり取りをリズムよく描いており、どこかほっこりとさせてくれるシーンが多数盛り込まれている。 木下監督による「あしたからの恋」と「たんとんとん」を通して、“本当の人間”の姿を垣間見ることができるかもしれない。