フランスが3か月延長した「非常事態宣言」って何?
フランス議会は20日、全土に発令されている「非常事態宣言」を3カ月延長することを決定した。13日のパリ同時テロ発生直後から発令されている「非常事態宣言」には、どのような効果があるのか。 13日夜にパリ市とその近郊で発生した同時テロは130人の犠牲者を出した。発生直後、オランド仏大統領は非常事態を宣言。美術館や図書館が閉鎖され、集会やデモの許可が取り消された。住民には不急の外出を控えるように通達された。
憲法ではなく法律上の規定
フランス憲法では国家の非常時、大統領に強大な権限が集中する「非常措置権」や、秩序維持の権限が行政から軍隊に移される戒厳状態が認められているが、今回の「非常事態宣言」はこのどちらでもなく、憲法に明文規定はない。「非常事態宣言」の根拠は1955年に制定された「緊急状態法」という法律で、アルジェリア独立戦争を受けて制定されたものだ。 「非常事態宣言」は公の秩序に対する重大な脅威があると判断された場合に大統領が宣言でき、期間を限定して警察権限を強化することなどが可能となる。1962年のアルジェリア独立戦争終結後は、1985年に仏領ニューカレドニアの暴動で宣言されたほか、フランス本土では2005年にパリ郊外で移民の若者による暴動があった際にも発令されている。 非常事態宣言は、12日以上の延長をする場合には議会の承認を得て法律を制定する必要がある。今回は、20日に議会で非常事態宣言を延長する法案が可決され、来年2月25日まで3カ月延長された。
宣言で何が起きる?
「非常事態」が宣言されると、人々の生活にはどのようなことが起きるのか。 大きな特徴は、警察権限の強化だ。内務大臣は「公の秩序と安全に対し危険な活動をしている人々」を自宅軟禁することができる権限を持つ。20日の上院でバルス首相は、これまでに164人を自宅軟禁状態としたことを明かしている。 また、裁判所の令状なしに、昼夜問わずに家宅捜索したり、武器を押収したりすることも可能となる。バルス首相によると、これまで793件の家宅捜索がなされ、174件の武器押収があった。公権力の行為を妨害しようとする者に対し、地域の全部または一部の滞在禁止を命じることもできる。