鉄道はなぜ「激混みOK?」 定員あってもほぼ無制限 いつから1人1席扱いしなくなったのか
旅客は列車内でどのくらいの面積を確保できる?
ところが1961(昭和36)年、「路線を定めて定期に運行する旅客自動車運送事業用自動車」つまり路線バスに限って、運行のため必要な保安上の措置を条件として臨時乗車定員を認める「第53条の2(現在の第54条)」が追加されます。 当時の運輸省の通知には「乗合バスについては輸送の需給の関係上、従来の乗車定員が守られ難い場合もみうけられる」と記されています。保安定員の緩和は不可能ですから、路線バスの定員もサービス定員だったということになります。 もともと路線バスの乗客を厳密に数えることは困難なので、交通需要が急激に伸びた昭和30年代、定員超過の運行は当たり前のことでした。臨時定員の設定にあたっては吊り手や手すり、換気などへの配慮や増便の努力を求めているものの、事実上、満員バスを追認したのです。 鉄道では1900(明治33)年制定の鉄道建設規程が、「客車内の面積は旅客定員1人に付平均3平方フィート(約0.27平方メートル)以上」と定めています。逆算すれば車両1両あたりの最大定員を算出できますが、定員の算出方法は指定されていません。 当時の客車の多くは座席定員のみの設定ですが、明治末頃から電車が登場するとこの規定をもとに立席定員が設定されました。1人あたりの面積という快適性につながる指標を用いたということは、鉄道は当初からサービス定員の考え方を取っていたといえるでしょう。
枝久保達也(鉄道ライター・都市交通史研究家)