退職するならボーナス返して、ヘッジファンドが人材維持で新たな戦略
(ブルームバーグ): 熾烈(しれつ)な人材争奪戦が展開するヘッジファンド業界で、約40億ドル(約6400億円)を運用する英アイスラー・キャピタルはトレーダーの弱みに付け込む戦略に出た。辞めるならボーナスを返すという条件だ。
ゴールドマン・サックス・グループの元パートナー、エドワード・アイスラー氏が設立したアイスラー・キャピタルは今年初め、トレーダーが年内に退職する場合は2023年に受け取ったボーナス変換を義務付けるルールを導入した。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。退社するポートフォリオマネジャーは、ボーナス支給に関連してヘッジファンドが支払った税金も払い戻す必要がある。
こうした「クローバック」の取り決めはヘッジファンドでは珍しくない。しかしアイスラーのケースは、マルチ戦略ファンドが人材獲得と維持の戦略で工夫をこらす必要性に迫られていることを示す最新の例となっった。一部のヘッジファンドはポートフォリオマネジャーに破格の報酬をオファーすると同時に、入社に同意しながらも辞退した場合の罰則を設けている。
アイスラーの広報担当者は、同社は報酬と福利厚生に関して業界の標準的な慣行に従っていると述べた。
「人材は当社の最も強力な資産だが、投資家利益との整合性も確保する必要がある」と述べ、「当社の報酬慣行は優秀な人材を呼び込み、かつ維持する一方で、投資家資本の長期スチュワードシップを提供する」と説明した。
ヘッジファンド、トップトレーダー争奪戦熾烈-採用で170億円約束
ヘッジファンド業界では、社内で最も優秀な成績を収めたトレーダーのボーナスが数百万ポンド規模になる可能性がある。ウォール街では通常3月から6月にかけて、人材移動の椅子取りゲームが行われる。
移籍を考えているトレーダーは通常、2月頃に前年度のボーナスを受け取ってから雇用主に転職の意思を伝えることが多い。
このためにヘッジファンド業界は採用危機に陥っており、ますます不満を募らせるファンドも少なくない。ライバル会社から継続的に人材を引き抜こうとするのではなく、次のスタートレーダーとなるべく若手社員を育成するプログラムを立ち上げているファンドもある。