琴桜、悲願の初優勝「先代には『ここで満足するな』と言われる」 初場所で綱取りへ
○琴桜(はたき込み)●豊昇龍(大相撲九州場所千秋楽=24日) 祖父である元横綱琴桜が最後に優勝してから51年、再び同じしこ名が賜杯に刻まれる。成し遂げたのは孫の2代目琴桜。入門から9年、悲願の初優勝だ。 【写真】祖父でもあった先代琴桜の墓前で手を合わせる大関琴桜と佐渡ケ嶽親方 「良かったと思います。しっかり辛抱してやれば賜杯を抱けるんだと実感できました」 1敗同士の豊昇龍との大一番を前に、珍しく高ぶりを感じていたという。それを何とか落ち着かせ、集中し、どっしり構えられたのが良かった。先に右上手を許して投げを打たれたが、体勢を崩すことなく、はたき込み。「がむしゃらにやっていたので全然、覚えていないけど、相手が土俵に落ちていて、やっと勝ったなと思いました」。稽古を重ねてきた体は重圧の中でも自然と動いた。 支度部屋を出ていく直前、目を閉じて座る琴桜の両肩には、綱を締めた先代琴桜がデザインされた大きなタオルが掛けられていた。最後の精神集中を行う、いつもの〝儀式〟だ。幕内に上がってから、このタオルを使っているという琴桜は「勝負の世界だから」と言い、父親である師匠の佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)は「本場所でしか使わないでしょ。それだけ先代のことを思っているってこと」と胸中を代弁した。 初場所で照ノ富士との優勝決定戦に敗れて悔し涙を流し、入門2年目の大の里に初優勝は先を越された。それでも琴桜は「自分は自分らしく、ですよ。(優勝を)意識した方がいいのか分からないけど、僕はすると相撲が硬くなる。三役昇進だって待ったし。慣れています、待つのは」と決して足元を見失わなかった。 前に出る相撲も増え、来場所は綱取りだ。「先代は横綱だし、『ここで満足するな』と言われると思う。先代にも師匠にもないような相撲を取っていきます」。亡き祖父の背中を追いながらも、27歳は自分の芯をぶらさない。(宝田将志)